前回のブログで動物愛護に関する法律についてご説明をさせていただいたのですが、今回は、動物愛護を考えるうえでとても大事な保護活動について、改めて考えてみたいと思います。
日本における犬猫の保護活動の現状
過去10年で犬の殺処分数は大幅に減少しました。これは、動物愛護に対する意識の高まりや、保護犬を家族として迎える里親制度が広く世間に認知されるようになったからだと考えられます。
また、動物保護団体やボランティアによる活動も活発化し、保護犬の医療や訓練、里親探しなど、様々な支援が行われることも大きな要因になります。
しかし、殺処分数は減少傾向にあるものの、年間数千頭の犬が殺処分されているという厳しい現実があります。
日本における保護犬の問題点
殺処分の現実
2018年の年間殺処分数は7,687頭にも及びます。1日にすると21頭の犬が殺処分により尊い命を落としていることになります。それでも、10年前(2008年)の82,464頭に比べれば、74,777頭(9.3%)まで減少してきているのは間違いのないことではあります。年々減少してきているものの、まだ7千頭以上の命が奪われていることには変わりはございません。その原因には、保護されてから施設に収容されている期間が10日程度と非常に短いことと、保護施設の運営資金が不足していることにより十分なケアや譲渡活動ができないこともり、まだまだ、「殺処分ゼロ」の理想には程遠いのが現実です。
保護施設の課題
日本の多くの保護施設では、収容能力に限界がきており、そのため、犬たちが適切なケアを受けられない状況に陥っています。また、スタッフの人員不足による犬たちの健康管理や社会化へのトレーニングが十分にできない状況も課題となっております。
国民への社会的意識と教育不足
日本国民のペットの所有に対する責任意識がまだまだ未成熟なため飼い主がペットの生涯にわたる責任を十分に理解していないことが原因となり安易に捨てられるケースが多々発生しております。また、学校や地域での動物愛護教育が十分に行われていないため、命の大切さや適切な飼育方法が広く浸透していないことも原因となっています。
譲渡活動に関する課題
保護団体の中には、譲渡条件が非常に厳しく、結果として新しい飼い主が見つかりにくくなっていることもうり、また、保護犬の存在や譲渡会の情報が十分に周知されておらず、多くの人が保護犬の存在を知らないことも大きく影響している一因でもあります。
ペット業界の問題
ペットショップでの過剰繁殖や不適切な販売が、保護犬の増加に寄与しています。また、繁殖業者やペットショップに対する法規制が不十分であり、不適切な取り扱いが続いていることがあります。
犬種の偏り
最近ではチワワやトイプードルなど一部の犬種に人気の偏りが見られ、それ以外の犬種が譲渡されにくい状況にあります。半面で、人気のある犬種の過剰な繁殖により、健康上の問題を抱える犬も多く保護されることがあります。
高齢犬の増加
人間と同様、高齢犬が増える中で、特別なケアや医療が必要となり、譲渡先を見つけるのが難しい状況があります。
保護権活動改善のための提案
- 保護権活動改善のため殺処分を減らす法規制や譲渡活動の強化が必要です。そのためには、公的援助や民間支援を増やし、施設の環境改善やスタッフの育成を行います。
- 学校や地域での動物愛護教育を推進し、命の大切さや適切な飼育方法を広めることも大きな役割になってきます。
- 譲渡条件の見直しや広報活動の強化を行い、保護犬の新しい飼い主を見つけやすくします。
- 繁殖業者やペットショップに対する規制を強化し、適切な取り扱いを促進します。
これらの問題に対処するためには、社会全体での意識改革と具体的な行動が不可欠です。保護犬に対する理解と支援が広がることで、より多くの犬が幸せな生活を送ることができるでしょう。
保護活動の海外との違い
日本と海外における保護活動にはいくつかの違いがあります。以下に主な相違点を挙げます。
保護施設の運営と役割
〈日本〉
多くの保護施設は自治体が運営しており、民間の保護団体も存在しますが、資金や人員の不足が課題となっています。動物愛護センターは迷子や放棄された動物を収容し、一定期間内に飼い主が見つからない場合、殺処分されることがあります。
〈海外〉
特に欧米諸国では、保護施設は主に非営利団体(NPOやチャリティー団体)によって運営されており、ボランティア活動が活発です。収容動物の殺処分を避けるために、広範な譲渡活動や里親探しが行われています。
殺処分の状況
〈日本〉
殺処分の数は減少傾向にありますが、まだ一定数が存在します。収容期間が限られており、期間内に新しい飼い主が見つからない場合、殺処分されることがあります。
〈海外〉
多くの先進国では「ノーキル」ポリシーが普及しており、殺処分を避けるためにあらゆる手段が講じられています。収容動物が健康であれば、飼い主が見つかるまで無期限に保護されることが一般的です。
譲渡活動と広報
〈日本〉
譲渡活動は地域のイベントやインターネットを通じて行われますが、まだ一般的な認知度が低いことが課題です。譲渡条件が厳しいため、新しい飼い主を見つけるのが難しい場合もあります。
〈海外〉
広範な譲渡活動が行われており、SNSやインターネットを活用した情報発信が盛んです。また、ペットの譲渡イベントが定期的に開催され、多くの人々が参加しています。譲渡条件も比較的柔軟であり、広範な層に受け入れられやすいです。
ペットの入手方法
〈日本〉
ペットショップでの購入が一般的であり、保護犬を選ぶ人は少数派です。ペットショップでの過剰繁殖や不適切な販売が問題視されています。
〈海外〉
多くの国では、ペットショップでの動物販売が規制されており、保護施設や譲渡イベントでのペットの入手が主流となっています。これにより、保護犬の譲渡が促進されています。
法規制と社会的意識
〈日本〉
動物の愛護及び管理に関する法律は整備されているものの、実際の運用や社会的意識においてはまだ改善の余地があります。動物虐待や放棄に対する罰則は強化されていますが、実際の執行には課題があります。
〈海外〉
動物愛護に関する法規制が厳格であり、動物虐待や放棄に対する罰則も厳しいです。社会全体で動物の福祉に対する意識が高く、適正な飼育が広く浸透しています。
教育と啓発
〈日本〉
学校や地域での動物愛護教育が少なく、命の大切さや適切な飼育方法についての啓発活動が不足しています。
〈海外〉
多くの国では、学校教育の一環として動物愛護教育が取り入れられており、子どもたちに命の大切さや動物の福祉について教えています。地域社会でも動物愛護に関する啓発活動が盛んです。
これらの違いを理解し、日本の保護活動を改善するためには、海外の成功事例を参考にしつつ、日本独自の文化や社会状況に適合した対策を講じることがとても重要なことだと思います。
まとめ
日本における保護犬の現状は改善の兆しが見えつつあります。しかし、依然として多くの課題が存在します。教育や啓発活動、法制度の強化、地域社会の連携が必要であり、個々の意識と行動が大切です。また、保護犬に対する理解と支援が広がることで、より多くの犬が新しい家庭に迎えられ、幸せな生活を送ることができるようにしたいものです。
次回は、海外の保護犬に関する具体的な状況についてお伝えできればと考えております。