犬の病気

犬も人間と同じように、さまざまな病気に掛かる恐れがあります。そして、犬種や年齢によってもなりやすい病気が異なります。また、犬は、野生のころのなごりで病気により体調が悪いとき、外的から身を守るため病気になっていることを隠す習性があります。そのため、飼い主さんが気づいたときには病気が進行していることも多々あることから、万が一のときに備えて、愛犬が発症しやすい病気を知っておくことも重要なカギになります。

大切な愛犬と健康で幸せな生活ができますようにとの思いもあって、今回は、さまざまな犬の病気の種類とかかりやすい傾向についてご紹介したいと思います。

目次

犬が掛かりやすい病気

犬の病気はさまざまありますが、以下は一般的に犬が掛かりやすい病気になります。

皮膚疾患

犬の皮膚疾患はさまざまな原因によって引き起こされますが、一般的に次のようなものがあります。

1.アレルギー性皮膚炎

空気中の花粉、ハウスダスト、食物、ダニなどに対する過敏反応によって引き起こされます。犬がかゆがることが一般的で、かきむしって皮膚を傷つけることがあります。

2.寄生虫による皮膚疾患

ノミやダニの感染による皮膚刺激やアレルギー反応が見られます。ノミアレルギー皮膚炎やダニ感染症が典型的な例です。

3.真菌感染症

カビや酵母などの真菌によって引き起こされます。例えば、白癬症(リングワーム)があります。

4.細菌感染症

皮膚の切り傷や傷口から細菌が侵入し、感染症を引き起こすことがあります。パイオニオスキン皮膚炎や細菌性皮膚炎がよく見られます。

5.皮膚腫瘍

良性のものから悪性のものまでさまざまな種類があります。例えば、脂肪腫、乳腺腫瘍、悪性黒色腫などがあります。

6.外傷や外部刺激による皮膚炎

犬がかきむしったり、刺激物に接触したりすることによって起こります。例えば、湿疹や皮膚炎があります。

犬の皮膚疾患は原因や症状によって異なり、正確な診断と適切な治療が必要になります。少しでも症状が見られた場合は、早めに獣医師に相談することをお勧めします。また、定期的な予防と日ごろからの衛生的な環境の維持が皮膚の健康を保つのに役立ちます。

関節炎

犬の関節炎は、関節の炎症や変性によって引き起こされる慢性的な疾患です。一般的に、以下のような種類があります。

1.変形性関節症

最も一般的なタイプで、関節の軟骨が摩耗し、炎症が引き起こされます。骨と骨の摩擦が増加し、犬が痛みや不快感を感じる可能性があります。

2.免疫関節炎

免疫システムが健康な組織を攻撃し、関節に炎症を引き起こす自己免疫疾患です。リウマチ性関節炎がその一例です。

3.感染性関節炎

細菌、ウイルス、真菌などによる感染が関節内に及ぶことで引き起こされます。典型的には外傷や手術後に起こりますが、時には血液中の感染源からも起こることがあります。

犬の関節炎の症状には、次のようなものがあります。

・関節の腫れや膨らみ
・歩行の困難や不安定性
・痛みや不快感による不自然な動きや挙動
・関節のこわばりや動きの制限
・朝のこわばりや動作の際のクリック音

犬の関節炎は、加齢や運動不足、遺伝的要因、外傷、肥満などの要因によってリスクが増加します。治療法には、症状の緩和や進行の遅延を目的とした薬物療法、栄養補助食品、体重管理、運動療法、物理療法、そして場合によっては手術などが含まれます。診断や治療に関しては、獣医師との相談が不可欠です。

消化器系の病気

犬の消化器系の病気にはさまざまなものがありますが、一般的な疾患や症状についてはかきのようなものがあります。

1.消化不良:

食べ物が適切に消化されず、胃や腸での消化過程がうまくいかない状態です。症状には嘔吐、下痢、腹部不快感、食欲不振などが含まれます。

2.胃腸炎

胃や腸の粘膜が炎症を起こす状態で、感染や食物中毒、ストレスなどが原因となります。症状には嘔吐、下痢、食欲不振、腹痛などがあります。

3.膵炎

膵臓の炎症を伴う病気で、高脂肪食、外傷、薬物、感染などが原因となります。症状には急性の激しい腹痛、嘔吐、下痢、食欲不振、痩せ細りなどがあります。

4.消化管梗塞

食物や異物が消化管内で詰まり、通常の消化や排泄が妨げられる状態です。症状には嘔吐、腹部膨満、便秘、食欲不振、不安などが含まれます。

5.腸閉塞

腸の通り道が閉塞されることにより、食物や消化液の通過が阻害される状態です。症状には嘔吐、下痢、腹部膨満、腹痛、食欲不振などがあります。

6.炎症性腸疾患

腸管の炎症によって引き起こされる慢性的な疾患で、原因は複数ありますが、免疫反応が関与することがあります。症状には慢性的な下痢、腹痛、血便、体重減少、食欲不振などがあります。

これらの消化器系の疾患は、犬の健康や生活の質に大きな影響を与える可能性があります。症状が見られた場合は、早めに獣医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。また、予防措置や適切な栄養管理、食事管理も消化器系の健康をサポートするために重要です。

耳の感染症

犬の耳の感染症は、外耳炎と呼ばれる疾患であり、外耳道や耳介の炎症を特徴とします。主な原因は次のとおりです:

1.細菌感染

バクテリアが外耳道に侵入して炎症を引き起こします。例えば、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、ピセリアなどが関与することがあります。

2.イースト感染

酵母菌が外耳道内で増殖し、炎症を引き起こします。一般的にはマラセジアという種類の酵母が関与します。

3.寄生虫感染

オトダクトミス、ダニ、ノミなどの寄生虫が耳内に感染することがあります。

4.アレルギー性反応

アレルギーによって引き起こされる外耳道の炎症があります。

5.外部刺激

水の浸入や外部物質の接触、傷などが耳の感染を引き起こす可能性が大きいです。

耳の感染症の症状には、次のようなものがあります。

・耳のかゆみや痛み
・耳内の赤みや腫れ
・異臭や耳垢の増加
・耳垢や分泌物の異常な増加
・耳をかく行動の増加

犬の耳の感染症は、早期に治療しないと慢性化する可能性があります。治療には、獣医師が耳を洗浄し、抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬などを処方することが一般的です。また、感染の原因となるアレルギー、寄生虫感染などを特定し、予防措置を講じることも重要です。定期的な耳の清掃や、適切な栄養と健康管理は耳の感染症のリスクを軽減するのにとても大切です。

心臓病

心臓病は、特に老齢の犬によく見られる病気で、心臓や血管の機能に異常が生じる病気です。主な心臓病には以下のものがあります。

1.僧帽弁閉鎖不全症

最も一般的な心臓病で、小型犬、特に高齢の小型犬によく見られます。ミトラル弁がうまく閉じないため、血液が逆流し、心臓の負担が増加します。

2.拡張型心筋症

心臓の筋肉が弱くなり、心臓が拡張して機能が低下します。特に大型犬によく見られますが、最近では穀物不足のフードなどの栄養不良も原因として関連付けられることがあります。

3.肥大型心筋症

心臓の筋肉が肥大化して、心室内の血液の通り道が狭くなります。一般的には猫によく見られますが、犬にも稀に発生します。

4.心内膜炎

心臓の内膜が炎症を起こす状態で、バクテリアや真菌の感染が原因です。

心臓病の症状には次のようなものがあります。

・呼吸困難や急速な呼吸
・食欲不振や体重減少
・埋め立てなどの活動の低下
・嘔吐や下痢
・腹部膨満
・震えや意識喪失

心臓病は早期に発見されることが重要です。獣医師はX線や心臓超音波などの検査を行い、適切な治療法を提案します。治療は、症状の軽減や進行の遅延を目的として行われます。利尿剤、血管拡張薬、強心薬などの薬物療法や食事管理、運動制限などが一般的な治療法になります。また、定期的なモニタリングや予防措置も重要になります。

糖尿病

犬の糖尿病は、膵臓がインスリンを適切に産生せず、または体がインスリンを効果的に利用できない状態になることで引き起こされる代謝性の疾患です。インスリンは、血糖値を調節し、体の細胞にグルコースを取り込むために必要です。糖尿病があると、血中のグルコース濃度が高くなり、体の細胞がエネルギーを得るのに必要な糖分をうまく利用できなくなります。

犬の糖尿病には主に次の2種類のタイプがあります。

タイプ①

インスリンの産生が不足するタイプです。このタイプは、通常、膵臓のβ細胞が破壊される自己免疫反応によって引き起こされ、糖尿病に掛かるほとんどの犬がこのタイプになります。

タイプ②

インスリンは産生されているが、体がそれを効果的に利用できないタイプです。このタイプは、インスリン抵抗性と呼ばれ特に肥満が原因で発症するもので、犬にはあまり一般的ではありません。

糖尿病の症状には次のようなものがあります。

・食欲不振
・体重減少
・飲水量の増加
・頻尿
・運動量の減少
・震えや意識喪失 ※重症の場合

糖尿病は早期に発見され、適切な管理が行われなければ合併症を引き起こす可能性があります。治療は、体重管理、特定の食事療法、定期的なインスリン注射などを含みます。獣医師の指導のもとで、定期的なモニタリングと治療計画の実施が重要になります。

歯周病

犬の歯周病は、歯肉、歯根膜、歯槽骨の歯周の炎症を特徴とする口腔の疾患です。主な原因は口内の細菌の蓄積と歯石の形成です。歯周病は、犬の口内が不衛生である場合に発生しやすく、進行すると歯を失うだけでなく、他の臓器にも影響を及ぼす可能性があります。

歯周病は一般的に以下の段階に分類されます。

1.歯垢の形成

口内の細菌や食物の残りが歯に付着し、歯垢を形成します。歯垢は、不適切な口腔衛生習慣が続くと歯石に変化します。

2.歯石(Tartar)の形成

歯垢が鉱化して硬い歯石が形成されます。歯石は歯肉と歯の間に付着し、歯肉の炎症を引き起こします。

3.歯周炎

歯肉が炎症を起こし、赤く腫れ、出血しやすくなります。歯周炎は初期の歯周病段階であり、歯周病のリバース可能な段階です。

4.歯周病

歯周炎が進行して、歯肉が深刻な炎症、歯根膜の破壊、歯槽骨の吸収を引き起こします。歯周病が進行すると、歯が抜け落ちる可能性があります。

歯周病の症状には、次のようなものがあります。

・歯肉の赤みや腫れ
・歯肉からの出血
・歯垢や歯石の蓄積
・悪臭のする口臭
・歯を咬むときの不快感
・歯が抜け落ちる

歯周病は重篤な疾患であり、定期的な歯科検査や専門の歯科ケアが必要です。歯石の除去、歯周ポケットのクリーニング、歯抜歯、そして適切な口腔衛生習慣の維持が治療や予防に役立ちます。歯周病の早期発見と治療は、犬の口腔および全身の健康を維持するために重要になります。

寄生虫感染症

犬の寄生虫感染症は、さまざまな種類の寄生虫によって引き起こされる疾患です。これらの寄生虫は、犬の体内で生活し、栄養を吸収したり、組織を損傷したりすることがあります。以下に、一般的な犬の寄生虫感染症とその症状をいくつか紹介します。

1.ノミとダニ

ノミは犬の皮膚上で血を吸い、かゆみや皮膚炎を引き起こします。ダニは皮膚の下に潜り、アレルギー性皮膚炎や血液感染症を引き起こすことがあります。

2.回虫

腸内に寄生し、下痢、嘔吐、腹痛などの消化器症状を引き起こすことがあります。重症化すると体重減少や貧血を引き起こす可能性があります。

3.鉤虫

腸内に寄生し、貧血や下痢、腹痛などの症状を引き起こします。重症化すると貧血が進行し、犬の健康に深刻な影響を与えることがあります。

4.ヒルマニア症

犬の皮膚や筋肉に寄生する寄生虫で、しばしば感染後数週間から数ヶ月で症状が現れます。症状には発熱、筋肉の痛み、関節炎、貧血などが含まれます。

5.フィラリア症

マラリア蚊によって伝播される寄生虫によって引き起こされます。心臓や肺動脈に寄生し、重篤な心臓病や呼吸器疾患を引き起こすことがあります。

これらの症状や感染症の深刻度は、寄生虫の種類や感染の程度によって異なります。定期的なフィラリア、ノミ・ダニの駆除や定期的な予防措置、獣医師の指示に従った定期的な健康診断が犬の寄生虫感染症の予防や早期発見に役立ちます。

以上、代表的な犬の病気をあげてみました。犬が健康でいるためには、定期的な健康チェックと予防措置が必要になります。獣医師との定期的な相談や予防接種、健康的な食事、適切な運動、清潔な環境の維持がとても大事になってきます。

犬種別による掛かりやすい病気

人間でも人種によって掛かりやすい病気があるように、犬にも種類によって掛かる病気が違ってきます。特に大型犬と小型犬では、かなり病気の内容も違ってきますので、ここでは、犬種によりかかりやすい病気についてご紹介いたします。ただし、必ず発症するというものではいので、必要以上に怖がらなくても大丈夫です。愛犬の病気の傾向を知り、食事や生活習慣の中で予防につながる対策にお役立ていただければと思います。

小型犬

ミニチュア・ダックスフンド

椎間板ヘルニア、糖尿病、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、そけいヘルニア、緑内障、関節炎、尿道結石症、進行性網膜萎縮症、股関節形成不全、外耳炎

チワワ

膝蓋骨脱臼、水頭症、尿路結石症、低血糖症、気管虚脱、僧帽弁閉鎖不全症、肛門嚢炎、角膜炎

トイ・プードル

椎間板ヘルニア、糖尿病、てんかん、膵炎、副腎皮質機能亢進症、膝蓋骨脱臼、僧帽弁閉鎖不全症、悪性リンパ腫、レッグ・ペルテス病、進行性網膜萎縮症

ポメラニアン

水頭症、そけいヘルニア、膝蓋骨脱臼、進行性網膜萎縮、副腎皮質機能亢進症

シー・ズー

免疫介在性貧血、椎間板ヘルニア、糖尿病、僧帽弁閉鎖不全症、緑内障、関節炎、熱中症

マルチーズ

免疫介在性溶血性貧血、僧帽弁閉鎖不全症、膝蓋骨脱臼、緑内障、白内障、関節炎

パピヨン

膝蓋骨脱臼、白内障、脱毛症

パグ

熱中症、気管虚脱、椎間板ヘルニア、水頭症、膝蓋骨脱臼、緑内障、白内障、レッグ・ペルテス病、

ヨークシャー・テリア

椎間板ヘルニア、水頭症、僧帽弁閉鎖不全症、膝蓋骨脱臼、レッグ・ペルテス病、尿道結石症、副腎皮質機能亢進症、気管虚脱、進行性網膜萎縮症

ミニチュア・ピンシャー

糖尿病、拡張型心筋症、レッグ・ペルテス病、尿道結石症、緑内障

中型犬

ミニチュア・シュナウザー

糖尿病、膵炎、レッグ・ペルテス病、尿道結石症、皮膚炎

柴犬

椎間板ヘルニア、膝蓋骨脱臼、心室中隔欠損症、緑内障、甲状腺機能低下症

ウェルシュ・コーギー・ペンブローク

椎間板ヘルニア、股関節形成不全、てんかん、緑内障、尿道結石症、進行性網膜萎縮症

ビーグル

椎間板ヘルニア、糖尿病、てんかん、リンパ肉腫、進行性網膜萎縮、副腎皮質機能亢進症、腎炎、白内障

ジャック・ラッセル・テリア

膝蓋骨脱臼、レッグ・パーセス病、副腎皮質機能亢進症

レンチ・ブルドッグ

熱中症、リンパ肉腫、乳腺腫瘍、尿道結石症、肥満細胞腫

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル

糖尿病、僧帽弁閉鎖不全症、膝蓋骨脱臼、臍ヘルニア

大型犬

シェットランド・シープドッグ

関節炎、レッグ・パーセス病、甲状腺機能低下症、

ゴールデン・レトリーバー

糖尿病、リンパ肉腫、尿道結石症、進行性網膜萎縮、甲状腺機能低下症、骨肉腫、股関節形成不全、気管虚脱、腎炎

ラブラドール・レトリーバー

股関節形成不全、悪性リンパ腫、皮膚炎、白内障、逆さまつげ、結膜炎

年齢別による掛かりやすい病気

子犬期(0歳~1歳)

感染症:パルボウイルス感染症、ジステンパー、ケンネルコフなど
寄生虫:ノミ、ダニ、回虫、鉤虫など
先天性疾患:股関節形成不全、肘関節形成不全、水頭症など

成犬期(1歳~7歳)

外耳炎
皮膚炎
椎間板ヘルニア
尿路結石
肥満

シニア期(7歳~)


心臓病
腎臓病
糖尿病
認知症

もちろん、これらの病気はあくまでも目安であり、すべての犬が罹患するわけではありません。しかし、それぞれの年齢でかかりやすい病気を知っておくことで、予防や早期発見に役立ちます。

愛犬の健康を守るために、定期的に獣医師による健康診断を受け、異常な兆候が見られたら早めに相談するようにしましょう。

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