犬に定期的な健康診断は必要ですか?
愛犬も大切な家族の一員です。健康を維持し、長生きができるように人間と同じように定期的に健康診断を受けて、安心した暮らしを続けられるようにしたいものですね。しかし、そのためには時間とお金がかかります。
そこで、今回は、犬にとって定期的な健康診断が必要な理由と、その費用について少しお話をさせていただきたいと思います。
犬に健康診断が必要な理由は?
犬の定期健康診断は、愛犬の健康を守るためにとても重要なことです。以下の3つが、犬に健康診断が必要な理由になります。
1.病気の早期発見・早期治療
定期的に健康診断を受けることで、病気の兆候を早期に発見することができます。病気は早期発見・早期治療が重要です。初期の段階であれば、治療も比較的簡単で、完治の可能性も高くなります。一方、発見が遅れると、治療が難しくなったり、完治が困難になったりする可能性があります。
2.健康状態の把握
健康診断を受けることで、愛犬の健康状態を把握することができます。体重、体格、毛並み、目の状態、歯の状態など、様々な項目をチェックすることで、愛犬の健康状態にどのような変化があるのかを知ることができます。
3.病気の予防
健康診断では、フィラリアやノミ・ダニなどの寄生虫の検査や、ワクチン接種なども行うことができます。これらの病気は、定期的に予防することで防ぐことができます。
健康診断はどれくらいの頻度で受診すればいいのですか?
犬は人間よりも早く年をため、できれば、生後6カ月のころに最初の健康診断を受けるのが良いといえます。その後は、6歳までは年に1回程度、7歳からはシニアの時期に入りますので、半年に1回は受けるようにすると安心です。
以下は、年齢別の健康診断の頻度とその理由になります。
1.子犬(0〜1歳)
頻度:3〜4週間に一度
理由:子犬は成長期にあり、ワクチン接種や成長に伴う健康チェックが必要です。適切な成長と発達を確認し、早期に健康問題を発見するために、頻繁な健康診断をお勧めします。
2.成人犬(1〜7歳)
頻度:年に一度
理由:成人犬は通常、安定した健康状態を維持していますが、年に一度の定期検診でワクチン接種、歯科検査、寄生虫検査などの検査を行うことが重要です。
3.シニア犬(7歳以上)
頻度:年に二度
理由:シニア犬は年齢とともに健康リスクが増加するため、より頻繁な健康チェックが必要です。半年に一度の健康診断で、加齢に伴う病気や問題を早期に発見し、適切な治療やケアを行うことに役立ちます。
◎ 特定の健康問題を抱える犬
頻度:獣医師の指示に従う
理由:特定の健康問題や慢性疾患を持つ犬は、より頻繁な健康チェックが必要です。獣医師が個々の状況に応じて適切な診断頻度を提案します。
健康診断の検査項目はどんなものがありますか?
病院によって多少の違いはありますが、基本的には下記に記載したものが健康診断の一般的な内容になります。ただし、その犬の病歴や年齢によって特別な検査が必要になる場合も想定されますのでご注意ください。
1.問診
問診は、日常生活における愛犬の様子を飼い主さんに確認し、その内容を基に診察するものです。問診により健康状態に問題がないか、また、病気が潜んでいないかといったことをチェックします。問診で大事なことは、どんな些細なことであってもちゃんと獣医師に伝えることです。
2.身体検査
- 体重と体型:体重測定と体型の評価を行い、肥満や体重減少などの異常をチェックします。
- 体温:犬の体温を測定し、異常がないか確認します。
- 皮膚と被毛:皮膚の状態や被毛の質をチェックし、皮膚炎、脱毛、寄生虫の有無を確認します。
- 目と耳:目や耳の清潔さ、感染の兆候、視力や聴力の問題を調べます。
- 口腔内の健康:歯や歯茎の状態をチェックし、歯垢、歯石、歯周病の有無を確認します。
- 心音と呼吸音:聴診器を使って心音と呼吸音を確認し、心臓や肺の異常をチェックします。
- 腹部の触診:腹部を触診し、内臓の状態や腫瘍の有無を確認します。
3.血液検査
- 全血球計算(CBC):赤血球、白血球、血小板の数を測定し、貧血、感染症、免疫系の問題をチェックします。
- 血液化学検査:肝臓、腎臓、膵臓の機能を評価し、糖尿病や代謝異常の有無を確認します。
- 電解質パネル:電解質バランスをチェックし、脱水や電解質異常を発見します。
4.尿検査
尿の成分を分析し、腎臓病や膀胱の病気、糖尿病やホルモン疾患などの兆候を確認します。
5.糞便検査
糞便を採取して顕微鏡で調べ、回虫、鉤虫、鞭虫、条虫などの寄生虫の有無や血便、腸内環境などを確認します。
6.レントゲン検査
胸部と腹部のレントゲン検査が一般的です。心臓や肝臓など、内臓の大きさや形、内臓の位置に異常がないかなどを確認します。また、仔犬の場合は、先天的な骨格の異常がないかを確認。また、シニア犬の場合は、関節炎や脊椎に異常がないか、腎臓結石、腫瘍などがないかの確認を行います。
7.超音波検査
レントゲン検査では調べきれない内臓の詳細な画像を調べ、腫瘍や内臓の異常を確認します。シニア犬や、血液検査などで異常が認められた場合は、受診しておくと良い検査です。
8.心電図検査(ECG)
心臓の電気的活動を測定し、不整脈や心臓の異常を検出します。
9.その他の特定検査
- ホルモン検査:甲状腺機能や副腎機能を評価するための検査を行います。
- アレルギー検査:アレルギーの原因を特定するための皮膚テストや血液検査を行います。
健康診断の費用はどれくらいですか?
犬の健康診断の費用は、病院や検査項目数によって異なりますが、おおよそ5,000円~3万円程度です。
一般的な目安として以下のような費用が見込まれます。
1.基本的な健康診断
費用:5,000円〜10,000円
内容:一般的なフィジカルチェック、基本的な血液検査、尿検査、糞便検査など。
2.詳細な健康診断
費用:10,000円〜30,000円
内容:CBCや血液化学検査などの詳細な血液検査、電解質パネル、レントゲン検査や超音波検査などの画像診断、心電図検査などの検査。
3.特定の検査や追加の検査
費用:5,000円〜20,000円 ※追加の検査ごと
内容:甲状腺機能検査、副腎機能検査などのホルモン検査、アレルギー検査、CTスキャン、MRIなどの画像診断。
4.地域や動物病院による違い
都市部の動物病院や高度な設備を備えた病院では、費用が高くなる傾向があります。また、地方の動物病院や小規模なクリニックでは、費用が比較的安く抑えられることがあります。
5.保険の適用
ペット保険に加入している場合、健康診断の費用が一部または全部カバーされることがあります。保険のプランや条件によって異なるため、保険会社に確認することが重要です。
6.定期健康診断の重要性
費用はかかるものの、定期健康診断は犬の健康維持と早期発見・予防に非常に重要です。定期的に健康診断を受けることで、治療費が高額になる前に健康問題を発見し、適切な対処を行うことができます。
最後に
犬は人間のように言葉を話すことができません。また、病気にかかっていても本能的に、それを隠そうとする性質があるため、自らが病気を訴えることもなければ、飼い主さんが病気を発見してあげることも非常に難しいといえるでしょう。特に気を付けなければならないのが、慢性疾患や悪性腫瘍のような重病を抱えていた場合、飼い主さんが症状に気づいたときにはすでに進行しているケースもあります。また、シニア犬といわれる年齢になれば、免疫力が低下して病気にかかりやすくなります。そのような病気を事前に発見してあげるためにもに定期的な健康診断が必要なのです。