動物愛護とは? ~ 分かっているようで、ちゃんと理解できていない~

突然ですが、「動物愛護」って良く聞きますが、ちゃんと理解できていますか?

動物愛護とは、動物の命の尊厳を守り、不必要に殺したり苦しめたりすることのないように扱い、その生態や習性を理解して適切な管理をすることとあります。これは、動物が不当な扱いや虐待を受けないようにし、快適で健康的な生活を送ることができるようにするための行動や意識のことを言います。

頭ではわかっていても、中々行動に移せているかというと、そうでもないようです。ニュースで報じられる「動物虐待」や「無責任な放置」など、色々な社会問題が日本には存在します。

❝ 地球は人間だけのものじゃない! ❞ という思いと、今、流行っている ❝ 多様性 ❞ の観点から、今回は、動物愛護の基本的な考え方を個人的に調べた内容について、少しお話しをさせていただきます。

目次

動物愛護の基本的な考え方

まず、「動物愛護とは何か?」という、動物愛護に関する基本的な考え方についての説明をさせていただきます。

動物の生命尊重

地球に生きているすべての動物には命があり、そして価値があります。人間のみならずすべての動物の生命を尊重し、無駄な殺傷は止めましょう。また、 動物が苦しむことのないように、適切な配慮と保護を行うようにしましょう。

動物の福祉

私たちには、動物が健康であるために適切な食事・住環境・医療を提供する義務があります。また、動物が苦痛を感じないような環境を整備し提供する使命があります。

自然な行動の尊重

動物がその種特有の自然な行動を阻害することなく生命が維持できる環境を維持し、また、動物が快適に過ごせるような環境を整備しなければいけません。

倫理的取り扱い

動物を不必要に苦しめることなく、人道的に扱い、飼い主としての責任を持ち、動物の福祉を最優先に考えなければなりません。

持続可能な利用

食料や労働力として利用する場合であっても、動物の福祉を考慮し、持続可能な方法を採用し、また、動物の飼育や利用が環境に与える影響を最小限に抑えなければなりません。

教育と啓発

学校や地域社会で動物愛護の重要性を教育し、啓発活動を行い、飼い主や一般市民の動物福祉に対する意識向上を行うよう努力する必要があります。

動物愛護の5つの自由

動物愛護の基本的な考え方を説明する上で、英国の有名な「動物の5つの自由(Five Freedoms)」がよく引用されます。

これは、1960年代の英国において家畜に対する動物福祉の理念として提唱され、現在では、家畜のみならず、ペットや実験動物などあらゆる人間の飼育下にある動物の福祉の指標として国際的に認められたものです。

以下は、その「動物愛護の5つの自由」について1965年にイギリスのブランベル委員会によって提唱され、動物福祉の指針として国際的に認知されているものです。

飢え・渇きからの自由(Freedom from Hunger and Thirst)

(1) 健康を維持するために栄養的に十分な食餌を与えられている。
(2) きれいな水をいつでも飲めるようになっている。

不快からの自由(Freedom from Discomfort)

温度、湿度、照明など、それぞれの動物にとって快適な環境を用意できている。

(1) 自由に身体の向きを変えることができ、自然に立つことができ、楽に横たわることができる。
(2) 清潔かつ静かで、気持ちよく休んだり、身を隠すことができる。
(3) 炎天下の日差し、雨風を防ぐことができる。
(4) キツすぎる首輪など苦痛のある飼育環境にいない。など
※ 身動きのできない狭い場所、糞尿まみれの状態、日よけのない炎天下、雨風や騒音などにさらされている、といった飼育環境は動物にとって好ましくはありません。

痛み・負傷・病気からの自由(Freedom from Pain, Injury or Disease)

(1) 怪我をするような危険物のある環境にいない。
(2) 病気にならないようにふだんから健康管理をしている。
(3) 痛み、外傷あるいは疾病の兆候があれば、十分な獣医医療が施される。

本来の行動がとれる自由(Freedom to behave normally)

(1) 各々の動物種の本来の生態や習性に従った自然な行動が行えるようにする。
(2) 群れや家族で生活する動物は同種の仲間と生活でき、また、単独で生活する動物は単独で生活できる。

恐怖・抑圧からの自由(Freedom from Fear and Distress)

(1) 精神的苦痛、過度なストレスとなる恐怖や不安を与えず、それから守ること。
(2) 動物も痛みや恐怖、苦痛を感じることを理解し、もしその兆候があれば原因を特定して軽減に努めること。

SDGsと動物愛護

SDGにおける動物愛護

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)は、2015年に国連が採択した2030年までに達成すべき17のグローバル目標から成り立っています。これらの目標は、貧困の撲滅、不平等の削減、気候変動への対応などを含み、動物愛護に関連する目標も含まれています。以下は、動物愛護とSDGsの関係性の説明になります。

目標2:飢餓をゼロに

動物の福祉と農業

持続可能な農業実践は、動物福祉の向上と食糧生産の効率化を目指します。動物の健康と福祉が確保された環境での農業は、食糧供給の安定と品質向上に寄与します。

目標3:すべての人に健康と福祉を

人と動物の健康のつながり

動物の健康と人間の健康は密接に関連しています。動物由来の病気(ズーノーシス)の予防や制御は、公共の健康を守るために重要です。また、ペットの存在は精神的な健康にも寄与します。

目標12:つくる責任 つかう責任

持続可能な消費と生産

動物製品の消費において、持続可能な方法で生産されたものを選択することは、動物福祉の向上につながります。例えば、フリーレンジの卵や、人道的に飼育された肉製品の消費などです。

目標13:気候変動に具体的な対策を

持続可能な畜産業

畜産業は温室効果ガス排出の一因ですが、持続可能な畜産方法の採用は、環境への影響を軽減し、動物の福祉を向上させることができます。例えば、飼育環境の改善や飼料の持続可能な調達などです。

目標14:海の豊かさを守ろう

海洋生物の保護

持続可能な漁業実践と海洋生態系の保護は、海洋生物の福祉と多様性の保全につながります。過剰漁業の防止や海洋汚染の削減は、海洋動物の生存環境を守るために重要です。

目標15:陸の豊かさも守ろう

陸上生態系と動物保護

森林保護や生物多様性の維持は、野生動物の生息地を守るために重要です。違法な密猟や生息地の破壊を防ぐことは、絶滅危惧種の保護に直結します。

動物愛護に関連する具体的な取り組み

1.エシカル消費

動物福祉に配慮した製品を選ぶことで、持続可能な消費と生産を支援します。

2.環境教育

学校や地域社会での教育活動を通じて、動物福祉と環境保護の重要性を広めます。

3.保護活動の支援

野生動物保護区や動物保護施設への支援を通じて、生物多様性の維持と動物の福祉向上に貢献します。

4.政策の推進

動物福祉に関する法規制の強化や、持続可能な農業・漁業政策の推進を求める活動を行います。

動物愛護は、持続可能な開発の一環として重要な位置を占めています。SDGsを達成するためには、人間と動物の福祉が密接に関連していることを認識し、総合的なアプローチを取ることが必要です。

日本における動物愛護の課題

日本における動物愛護には多くの課題が存在します。これらの課題は法律や規制の運用、社会意識、実践的な取り組みなど、多岐にわたります。以下に、日本における動物愛護に対する主な課題を挙げ、その概要を説明します。

動物虐待の防止と取り締まり

  • 虐待事例の増加 : 動物虐待の事例が報告されることが増えており、その対応が急務です。
  • 法的制裁の不十分さ : 虐待行為に対する罰則が軽いことがあり、抑止力が不足していると指摘されています。
  • 通報システムの強化 : 動物虐待を早期に発見し、適切に対応するための通報システムや教育が必要です。

ペットの適正飼育と繁殖業の管理

  • 不適切な飼育環境 : 一部のペットショップや繁殖業者で、動物が不適切な環境で飼育されているケースが報告されています。
  • 過剰繁殖と放棄 : ペットの過剰繁殖が問題となっており、その結果、飼い主に放棄される動物が増えています。
  • 規制と監視の強化 : 繁殖業者やペットショップに対する規制と監視が強化されるべきです。

動物保護施設の運営と里親探し

  • 収容施設の不足 : 保護された動物を収容する施設が不足しており、過密状態が続いています。
  • 里親制度の普及 : 里親制度の認知度が低く、動物の引き取り手が見つからないことが多いです。
  • 保護施設の支援 : 保護施設の運営資金やリソースが不足しており、行政や地域社会からの支援が求められています。

社会の意識と教育

  • 動物福祉に対する理解不足 : 一般市民の動物福祉に対する理解が不十分なことが多く、教育や啓発活動が必要です。
  • 動物愛護教育の強化 : 学校教育や地域社会での動物愛護教育を強化し、次世代に動物福祉の重要性を伝えることが重要です。

野生動物の保護

  • 生息地の減少 : 開発や環境破壊により、野生動物の生息地が減少し、生態系のバランスが崩れています。
  • 密猟と違法取引 : 野生動物の密猟や違法取引が問題となっており、これに対する取り締まりと保護活動が必要です。
  • 保護活動の支援 : 野生動物の保護活動を支援し、保護区の設置や管理を強化することが求められます。

動物実験の倫理

  • 動物実験の規制 : 動物実験に対する倫理的な問題が議論されており、これに対する規制の強化が求められています。
  • 代替方法の研究 : 動物実験に代わる方法の研究と実践を推進し、動物福祉に配慮した科学的進歩を目指すことが重要です。

課題解決に向けた取り組み

法律と規制の整備

  • 動物愛護管理法の改正を進め、虐待行為に対する罰則を強化する。
  • 繁殖業者やペットショップに対する監視体制を強化し、不適切な飼育環境を改善する。

社会意識の向上

  • 学校教育や地域社会での動物愛護教育を強化し、動物福祉の重要性を広める。
  • メディアやSNSを活用して、動物愛護に関する情報を発信し、意識を高める。

保護施設の支援と里親制度の普及

  • 保護施設への資金援助やボランティア活動を推進し、運営を支援する。
  • 里親制度の普及活動を行い、動物の新しい飼い主を見つけるための取り組みを強化する。

野生動物の保護

  • 生息地の保護と再生を推進し、野生動物の生態系を守る。
  • 密猟や違法取引に対する取り締まりを強化し、国際協力を通じて保護活動を進める。

動物実験の代替方法の推進

  • 動物実験に代わる科学的な研究方法を推進し、動物福祉に配慮した研究を進める。
  • 動物実験に関する倫理規定を強化し、透明性を確保する。

これらの取り組みを通じて、日本における動物愛護の課題を解決し、動物と人間が共生する社会を実現することが目指されています。

最後に

冒頭でもお話ししたとおり、動物愛護とは、動物の命の尊厳を守り、不必要に殺したり苦しめたりすることのないように扱い、その生態や習性を理解して適切な管理をすることです。この地球において動物と人間が共に幸せに暮らせる社会を作ることにあります。また、動物愛護において大事なのは、正しい知識と責任を持つことです。その上で、動物と人のどちらの尊厳も大切であることを認識しましょう。

EGO ❞ から ❝ ECO ❞ へ 自分だけが良ければという ❝ 我儘 ❞ な考えを改め、地球に住むすべての生き物の ❝ 環境 ❞ を守ることを考え、人間が動物と共存する社会の実現を目指しましょう。そのためにも、あなたの理解ある行動が必要になってきます。

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