日本のブリーダーについて調べてみました!

ご存知のとおりブリーダーは、主に犬を交配させて出産、繁殖を行い流通、販売する人のことを言います。そのようなブリーダーですが、日本では具体的にどのような仕事を行い、どのような法律によって規制がされているかについて見ていきたいと思います。また、日本におけるブリーダーの実態と抱えている問題点についても合わせて見ていきたいと思います。

目次

ブリーダーの本来の役割

ブリーダーは、単に犬を繁殖させることだけではなく、犬にとっての健康と幸福を最優先に考え、犬種の保護や改良に貢献することが本来の役割になります。プロのブリーダーの方であれば、必ず次に記載した内容を念頭に仕事をされていることだと考えます。そうしたブリーダーとしての役割と責任について具体的に検証していきたいと思います。

犬種の保護と改良

  • 犬種にはゴールデンレトリバーやフレンチブルドッグなど各々に理想的な形態や性格、健康状態に関する基準が定められており、ブリーダーはこれらの基準を維持しながら純粋な血統を守るために繁殖を行っています。
  • ブリーダーは健康な血統を維持するために、近親交配は避け、遺伝的多様性を保つような配慮を行います。これによって、近親交配による遺伝的疾患のリスクを排除し、健全で健康な子犬を繁殖させているのです。

犬の健康と福祉の確保

  • ブリーダーは、繁殖に使う犬とその子犬の健康を守るための適切な医療ケアと栄養管理を行う義務があります。また、定期的な健康管理や遺伝子検査も重要な役割になっています。
  • 適切な飼育環境を整え、犬がストレスの少ない、清潔で安全な環境で生活できるようにすることが求められます。これには、十分な運動と精神的刺激を提供することも含まれています。

繁殖の計画と管理

  • ブリーダーは、無理のない繁殖スケジュールを立て、メス犬が十分に回復できるよう配慮しなければいけません。また、適切なパートナーを選定し、健康で性格の良い子犬を生み出すことを目指さなければいけません。
  • 子犬が健全に成長し、新しい家庭で幸せに暮らせるように、早期の社会化と基本的なトレーニングを行う必要があります。

責任のある販売と販売後のサポート

  • ブリーダーは、子犬を迎える飼い主が責任を持って育てられるか、また、適切な飼育環境があるかの確認を行う必要があります。
  • ブリーダーは、子犬が新しい家庭に迎え入れられた後も、飼い主に対して飼育に関するサポートを行い、また、必要に応じて飼育に関するアドバイスや相談に応じる必要があります。

倫理的な行動と飼い主への教育

  • ブリーダーは、利益を追求するだけでなく、犬の幸福と健康を守ることを最優先に考える必要があります。
  • ブリーダーは、犬の特性や適切な飼育方法について、飼い主にしつけや教育を行い、動物愛護の意識を広める役割も担っています。

動物愛護の社会的な責任

  • ブリーダーは、社会全体での動物福祉の向上に貢献し、責任あるペットの飼育を促進する責任があります。また、劣悪な繁殖や不適切な販売を防ぐための啓発活動にも積極的に参加する必要があります。

ブリーダーの本来の役割は、犬種を守り、犬の健康と幸福を確保し、責任ある飼い主に子犬を引き渡すことです。倫理的で専門的なブリーダーは、単なる繁殖業者ではなく、犬種の未来を支える重要な役割を担っています。

日本におけるブリーダーの実態と抱えている問題点

日本には、犬の繁殖を専門とするブリーダーが数多く存在します。そして、その規模や経営形態はさまざまです。小規模で家庭的なブリーダーから、大規模に商業的な繁殖を行う施設まで幅広く存在します。また、ブリーダーの多くは良心的なブリーダーで、犬種の保護と健康を重視し、適切な繁殖計画とケアを行っていますが、一部の悪質なブリーダーの中には、利益優先で、動物の健康や福祉を軽視した繁殖を行うブリーダーが依然として存在しています。そのような日本のブリーダーを取り巻く環境の実態について少しお伝えできればと思います。

日本のブリーダーの数と形態

日本におけるブリーダーの実態は、過去数年で改善が求められてきた問題を抱えていますが、現在も多くの課題が残されている状況です。以下はその主なものになります。

ブリーダーの登録者数

日本におけるブリーダーの数は、ブリーダーの資格認定登録がない日本では正確な数を把握することは困難です。しかし、犬や猫の販売を行う場合、動物取扱業として地方自治体に登録することが義務付けられているため、法的に認可されたブリーダーの数は各自治体に登録されている数に基づいて推測することができます。平成28年度の環境省データによると、第一種動物取扱業者のうち、ブリーダーを含む「犬猫等販売業のうち繁殖を行う者」の登録状況は日本全国で12,603件となっています。しかしこれは、登録されている業者の数で、登録を行わずに無許可でのブリーダー事業者を含めるともっと多くなります。

ブリーダーの規模とその形態

動物愛護団体や関連機関からのデータによると、全国的に多くのブリーダーが存在しています。その規模は大きく異なり、個人経営の小規模なブリーダーから、商業的に大規模に繁殖を行うブリーダーまでさまざま存在します。そして、ブリーダーの形態もさまざまで、下記の形態に分類することができます。

1.専業繁殖者

最も市場に多く存在しており、ブリーダーの40~50%を占めているとされています。多品種、多頭数で、牧場などの大規模な繁殖施設で運営を行っています。

2.ペットショップ経営兼繁殖者

ペットショップを経営するかたわらで自家繁殖を行っている事業者です。ブリーダー全体の10~20%を占めており、多品種、多頭数を扱うのが特徴です。

3.一般ブリーダー

一犬種のみの繁殖か2~3種類の少ない犬種の繁殖を行う事業者です。一般ブリーダーは、頭数生産のケースが多いという特徴があり、ブリーダー全体の10~20%にあたります。

4.趣味的繁殖者(ホビーブリーダー)

販売目的での繁殖ではなく、供給者の要望に応えるための趣味的な繁殖者のことを指します。こちらも一犬種のみの繁殖が殆どでブリーダー全体の10~20%にあたります。

ブリーダーの社会的地位向上

ブリーダーの社会的地位を向上させることは、動物福祉の向上や業界全体の健全化にとって非常に重要な課題でもあります。ブリーダーが専門知識と倫理的な基準に基づいて活動することで、社会的な信頼を得ることができます。しかし、ドイツやイギリス、フランス、アメリカなどの欧米諸国ではブリーダーは犬の専門家として高い地位にあります。それに引き換え、日本ではブリーダーになるために専門資格はありません。犬種の向上を目指す優良なブリーダーも多く存在しますが、残念ながら一方では十分な知識をもたず販売を目的とした不適切で動物愛護に反する繁殖を行っている悪質なブリーダーも多く存在することも事実なのです。以下では、そのような優良なブリーダーの社会的地位を向上させるための取り組みについて記載して見ました。

ブリーダーに対する法的な保護と支援

ブリーダーの社会的地位向上には、教育や倫理基準の確立、社会的認知の向上、透明性の確保、社会貢献活動、業界団体との連携、そして法的支援が不可欠です。これらの取り組みを通じて、ブリーダーは動物福祉に貢献する専門職としての地位を確立し、社会からの信頼と尊敬を得ることができるます。

ブリーダーの教育と専門知識の向上

ブリーダーとしての活動に必要な専門知識や技術を学ぶための教育プログラムを設け、認定資格を取得できるようにします。これにより、ブリーダーが動物の遺伝学、繁殖技術、健康管理、行動学などに関する深い知識を持つ専門家として社会的に認められるようになります。また、ブリーダーが最新の動物福祉や繁殖技術に関する知識を継続的に学び続けるための研修プログラムを行います。これにより、業界全体の水準が向上し、ブリーダーとしての信頼性が高まります。

ブリーダーとしての倫理的な基準と認定制度の確立

ブリーダーが従うべき倫理的なガイドラインを行政から明確に示し、そのガイドラインに基づいた運営を実施することにより、動物福祉の重視、遺伝的多様性の確保、責任ある繁殖などの倫理的な役割が確立されることになります。また、ブリーダーに関係する公的団体や業界団体による認定制度を導入し、認定に合格したブリーダーには、社会的地位と社会的信用が確立できます。

ブリーダーの役割の周知

ブリーダーの役割や責任、動物福祉への貢献について、広く社会に周知する活動を行います。メディアや教育機関を通じて、ブリーダーが単なる繁殖業者ではなく、動物の健康や福祉を守る専門職であることを広めることも重要です。また、優れたブリーダーの成功事例をマスメディアなどで紹介することで、他のブリーダーに刺激を与え、業界全体のレベルアップにつなぐことも大切です。

ブリーダーの透明性と信頼性の確保

ブリーダーの活動内容や繁殖工程をSNS等で公開し、信頼できる情報を消費者に提供します。これは、施設の見学や繁殖過程の説明などを通じて信頼を確保する一つの方法です。また、消費者とのコミュニケーションを強化し、ペット購入者に対して犬や猫の飼育に関するアドバイスやサポートを実施することで、更なる信頼関係の構築にもなります。

ブリーダーの社会貢献活動への参加

保護団体や動物愛護団体と協力し、捨てられた動物の救助や里親探しに貢献することで、ブリーダーの社会的な評価を高めることができます。また、地域社会や学校などでの教育活動や啓発活動に参加し、動物福祉や適切なペットの飼育方法についての知識を広めることで、ブリーダーとしての社会的役割の大切さを世に広めます。

ブリーダー関連の業界団体との連携

ブリーダーが所属する業界団体が協力し、共同で動物福祉に関するガイドラインを策定し、業界全体の質を向上させるための共同プロジェクトや研修、情報交換を活発に行うことも重要な役割です。また、業界内で相互評価システムを導入し、ブリーダー同士が互いの活動を確認することで、品質の向上と社会的信頼を確保できます。

悪質なブリーダーの根絶

悪質なブリーダーの根絶は、動物福祉の向上を目指すために非常に重要な課題です。悪質なブリーダーは、動物の健康や福祉を無視し、利益を最優先にして繁殖活動を行うため、動物たちに多大な苦痛を与えます。この問題を解決するためには、法的規制の強化、監視体制の強化、消費者意識の向上、教育と啓発など、複数のアプローチが必要です。

近年、日本の法規制を国際的な動物福祉基準の観点に照らし合わせて見直し、改善することが求められています。これにより、グローバルな基準に沿った動物福祉が確保されることになります。また、海外の動物保護団体や政府機関とブリーダーに関する情報の交換を行い、悪質なブリーダーに対する国際的な取り締まりを強化する方法もあります。

悪質なブリーダーの根絶は、法律の強化、監視体制の徹底、消費者の教育、そして社会全体での協力が不可欠です。動物福祉を尊重し、適切な飼育環境と倫理的な繁殖活動が行われることを確保するために、すべての関係者が協力して取り組むことが重要になってきます。

ブリーダーに関わる法律の改正点

日本におけるブリーダーに関わる法律の改正点は、特に「動物愛護法」に関連して、動物の福祉をより強化するために行われています。以下は、主な改正点とその内容になります。

動物愛護法の改正(2020年施行)

2020年の動物愛護法改正は、ブリーダーを含む動物取扱業者に大きな影響を与える重要な改正が行われました。

1.生後56日以下の犬猫の販売禁止(2021年6月実施)

生後56日に満たない犬の販売を禁止する規定です。生まれたばかりの犬をあまりにも早く親兄弟から引き離すと、生きていく上で必要な社会性を身に付けることができないためで、社会性を身に付けないままで飼い主のもとに引き取られた犬猫は、噛みついたり暴れたりといった問題行動を起こす危険性が高いことが理由で改正されました。

2.繁殖年齢と出産回数に制限(2020年6月運用開始)

メス犬は7歳以上での繁殖が禁止されました。これにより、健康リスクの高い高齢犬の出産を防ぎ、犬の健康を保護することを目的としています。また、メス犬が一生のうちに繁殖できる回数も上限6回と制限が設けられ、これにより過剰な繁殖による負担を軽減し、犬の福祉を向上させることを目的とした改正になります。

3.飼育環境の基準強化(2020年6月実施)

飼育ケージや運動スペースのサイズが具体的に定められ、犬が適切に運動できる環境を提供することが義務付けられました。具体的には縦(体長の4倍)×横(体長の4.5倍)×高さ(体高の2倍)以上のスペースが必要となってきます。これは、飼育環境の清掃や衛生管理が強化され、犬が清潔で健康的な環境で飼育されることをもくてきとして改正されました。

4.譲渡前教育と健康管理(2020年6月実施)

ブリーダーは、犬や猫を新しい飼い主に譲渡する前に、適切な社会化や基本的なトレーニングを施すことが求められます。また、譲渡前に健康診断を行い、犬や猫の健康状態についての証明書を新しい飼い主に提供することが義務化されました。

5.マイクロチップの装着義務化(2022年6月実施)

2022年6月から、すべてのブリーダーは繁殖した犬や猫にマイクロチップを装着し、個体識別情報を登録することが義務付けられました。これにより、動物のトレーサビリティが向上し、迷子や盗難のリスクを減らすことが可能となりました。マイクロチップの登録義務化では、ブリーダーやペットショップなどに対して、犬または猫を取得した日(生後90日以内の犬猫を取得した場合は、生後90日を経過した日)から30日を経過する日までに装着することを義務付けています。

動物取扱業者の登録要件の厳格化

ブリーダー含む動物取扱業者に対する登録要件が厳格化されました。ブリーダーとしての適正な能力や知識が求められるようになり、動物福祉に関する研修の受講が推奨されています。また、地方自治体によるブリーダーの監査が強化され、定期的に施設の状況がチェックされるようになりました。違反が見つかった場合、早急に改善が求められ、場合によっては営業停止や罰金が科されることがあります。

虐待に対する罰則の強化

動物の虐待や不適切な扱いに対する罰則が強化されました。動物を故意に虐待した場合、罰金や懲役刑が科される可能性があります。これは、ブリーダーが適切な環境で動物を飼育しなければならないことを強く示すものです。

動物取扱業者の公開情報

ブリーダーの登録情報や施設の状況、過去の違反歴などが公開されることが義務化されました。これにより、消費者が信頼できるブリーダーを選ぶための情報が提供されるようになっています。

これらの法改正は、ブリーダーがより適切に犬や猫の繁殖や管理を行うことを促進し、動物福祉の向上を図るためのものです。法律の強化により、動物の健康や福祉がさらに保護されることが期待されています。ブリーダーには、これらの新しい規制に従い、責任を持って活動することが求められています。

パピーミルの問題

パピーミルは、販売を目的として愛玩犬を費用をかけずに大量に繁殖させる悪質なブリーダーのことを言います。パピーは「子犬」、ミルは「工場」のことです。つまり、子犬を製造する工場が語源になります。 これらの施設では、犬の健康や福祉が軽視され、過密な環境で劣悪な条件のもと繁殖が行われることが多いです。以下は、パピーミルの問題点についてになります。

劣悪な飼育環境

パピーミルでは、できるだけ多くの犬を効率的に飼育し、繁殖させるために、ケージやスペースが非常に狭く、犬が十分に動き回れないような状況が生じることが多く、犬のストレスや病気の原因となります。また、パピーミルでは、清掃や衛生管理が十分に行われないことが多く、犬が不衛生な環境で飼育される結果、感染症や皮膚病にかかるリスクがあります。

健康管理の欠如

パピーミルでは、費用を抑えるために、獣医師による健康診断や治療が十分に行われない場合が多いです。これにより、繁殖に適さない犬が繁殖に使われたり、遺伝的な問題を持つ子犬が生まれることがあります。また、利益を追求するあまり、遺伝的な疾患を持つ犬同士の交配が行われたり、同じ犬が何度も繁殖に使われることがあります。この結果、生まれてくる子犬には遺伝的な病気や奇形が見られることが多く、短命に終わる場合があります。

社会的訓練の欠如

パピーミルの犬は、十分な社会的訓練が行われることなく人間や他の犬との適切な接触がないまま成長し、結果、攻撃的になったり、恐怖心を抱きやすくなったりするなど、行動上の問題が発生しやすくなります。

心理的ストレスと行動問題

パピーミルの犬は、狭いケージの中で長期間過ごすことが一般的で、これにより心理的なストレスが蓄積されます。ストレスによる過剰な吠えや無気力、異常行動が見られることもあります。

過剰繁殖と動物の供給過剰

パピーミルで大量に生産された子犬は、ペットショップやインターネットで販売されますが、供給過剰になると売れ残る子犬が増えます。これが結果として、捨て犬や動物保護施設での犬の数を増やし、さらには殺処分に繋がるケースもあります。

倫理的問題

利益優先の繁殖: パピーミルは、動物福祉を犠牲にして利益を追求する姿勢が批判されており、動物愛護の観点から大きな問題となっています。これにより、消費者の意識も高まり、パピーミルで繁殖された犬を購入しないという動きが広がっています。

法的な対応の遅れ

日本においても、パピーミルに対する法的規制は存在しますが、実際の取り締まりや監視が不十分なことが多く、問題が続いています。動物愛護法の改正などにより規制は強化されていますが、違法な繁殖や虐待を完全に防ぐことは依然として難しい状況です。

消費者への影響

パピーミルから出た犬は、遺伝的な病気や社会化不足による行動問題を抱えていることが多く、購入した消費者がこれらの問題に直面することが少なくありません。結果として、ペットの飼育において多くの困難を抱えることになります。

パピーミルの問題は、動物福祉に反する行為が商業的な繁殖活動によって行われていることに起因します。これを解決するためには、法律や規制の強化、ブリーダーに対する厳格な監視、そして消費者の意識向上が必要です。消費者としても、信頼できるブリーダーからの購入や、保護犬の譲渡を選ぶことで、パピーミルの問題を減少させる手助けをすることができます。

まとめ

日本におけるブリーダーの実態は多様であり、小規模な家庭内ブリーダーから商業的な大規模ブリーダーまでさまざまです。しかし、動物福祉の視点から見ると、法的規制や監視体制が不十分であり、劣悪な繁殖環境やパピーミルの存在が問題となっています。これらの課題を解決するためには、法的規制の強化、監視体制の改善、消費者の意識向上、そして倫理的なブリーダーの支援が不可欠だと考えております。

ブリーダーの仕事に関しては、多くの皆さまが関心を寄せていただいていることもあり、これからも多くの角度からブリーダーに関するブログを掲載していきたいと思います。

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