ブリーダーは、命を繋ぐ大切な役割を担います。しかし、その一方で、安易な気持ちで繁殖を行うことによる不幸な動物を増やす可能性も孕んでいることを深く理解しなければなりません。
ブリーダーになるための3つのポイント
前回のブログでも説明いたしましたとおり、日本で犬のブリーダーになるための資格や免許はありません。しかし、ブリーダーを目指す場合には、動物福祉を最優先に考え、責任あるブリーディングを行うことが大前提になってきます。その上で、以下の3つのポイントを踏まえてブリーダーになるための準備を進める必要があります。
(Point1) 法律と倫理
ブリーダーとして事業を行うには、動物愛護管理法に基づき、「第一種動物取扱業の登録」を都道府県知事へ行う必要があります。また、獣医師資格保有者などの専門知識を持つ「物取扱責任者の設置」が義務付けられています。
倫理面では、動物福祉への配慮を考え、適切な飼育環境の提供、遺伝性疾患のリスク管理、販売後のサポートなど、動物の生涯にわたる福祉を常に考えた行動をしなければなりません。
(Point2) 専門知識と技術
繁殖に関する知識としての遺伝学や繁殖生理学、育種学などを学び、健全な子孫を残すための計画的な繁殖を目指す必要があります。また、適切な飼養環境の整備、健康管理、疾病予防、問題行動への対応など、動物の健康と安全を守るための飼育管理の知識と技術が必要となります。
その他に、犬種に関する知識として、各品種の特性や飼育上の注意点、かかりやすい病気などを理解し、適切な飼育指導を行う必要があります。
(Point3) 事業としての安定化
施設の整備、繁殖犬猫の購入、飼育費用、医療費など、多額の費用がかかります。事業計画を立てて、安定的な経営を目指すことが重要です。そして、ペットショップとの契約や、ホームページ、SNSなどを活用した販売方法など事前に検討が必要になってきます。また、販売後の飼育相談など、顧客との信頼関係を築くことが最も重要になってきます。
ペットブリーダーは、命を預かる責任とやりがいのある仕事です。安易な気持ちではなく、動物福祉と向き合いながら、覚悟と情熱を持って取り組んでいきましょう。
どのようなプロセスを経てブリーダーになるのですか?
ブリーダーになるためのプロセスは、大きく分けて以下の7つのステップで考えることができます。
(ステップ1)事前準備と情報収集
- どの動物種を扱うか、どのようなブリーディングをしたいのか、具体的な目標を明確にする。
- ブリーダーという仕事内容、必要な知識・技術、責任の重さなどを理解する。
- 自分の性格やライフスタイル、経済状況などがブリーダーという仕事に合っているか、自己分析を行う。
- 実際にブリーダーとして活躍している人に話を聞く、見学に行くなど、生の声を聞く。
(ステップ2)専門知識と技術の習得
- 動物の飼育管理、繁殖、遺伝、健康管理に関する基礎知識を学ぶ。
- 専門書を読む、セミナーに参加する、専門学校に通うなど、自分に合った学習方法を見つける。
- 実際に動物に触れ合いながら、飼育経験を積む。
- 動物病院での実務経験やボランティア活動なども役立ちます。
(ステップ3)法律・倫理の理解
- 動物愛護管理法や関連法規を理解し、遵守する。
- 動物福祉の重要性を認識し、倫理的なブリーディングを実践する。
- 動物取扱責任者の資格取得も検討する。
(ステップ4)施設・設備の準備
- 飼育する動物種や頭数に合わせた、適切な広さと設備を備えた飼育施設を準備する。
- 繁殖用のスペース、運動場、温度・湿度管理設備、衛生管理設備などを整える。
- 必要に応じて、獣医と相談しながら、医療設備を整える。
(ステップ5)繁殖犬・猫の準備
- 遺伝的な病気のリスクを考慮し、健全な繁殖犬・猫を選ぶ。
- 血統書を確認する、獣医師による健康診断を受けるなど、慎重に進める。
- 信頼できるブリーダーから譲り受けることが重要。
(ステップ6)繁殖・販売
- 繁殖計画を立て、適切な交配を行う。
- 母犬・猫の体調管理、出産のサポート、子犬・猫の健康管理など、責任を持って行う。
- 販売ルートを確保し、適切な価格設定を行う。
(ステップ7)販売後のサポート
- 新しい飼い主に対して、飼育方法の指導、食事や健康管理のアドバイスなど、きめ細やかなサポートを行う。
- 必要に応じて、しつけ教室の紹介や、ペットホテルの手配などを行う。
- 飼育放棄を防ぐため、生涯にわたるサポート体制を整える。
ブリーダーになるには、時間と費用、そして何よりも動物に対する深い愛情と責任感が必要です。一歩ずつ着実に準備を進め、動物たちの幸せな未来のために貢献できるブリーダーを目指してください。
ブリーダーになるための学校はありますか?
ブリーダーになるために必須の国家資格は今のところありませんが、専門的な知識や技術を身につけるためにブリーダー養成学校に通うことは有効な手段になります。
ブリーダー養成学校で学ぶことができる内容
犬・猫の繁殖学:遺伝学、繁殖生理学、育種学、新生子ケアなど、繁殖に関する専門知識を学びます。
飼育管理:犬種・猫種ごとの飼育方法、健康管理、疾病予防、しつけ、問題行動への対処法などを学びます。
動物福祉:動物の権利、倫理的なブリーディング、飼育環境の重要性などを学び、動物福祉に関する意識を高めます。
法令:動物愛護管理法をはじめとする関連法規を学び、責任あるブリーダーとしての行動基準を身につけます。
経営:ブリーダーとしての事業計画の立て方、販売方法、顧客対応などを学びます。
ブリーダー養成学校を選ぶ際の注意点
カリキュラム:自分の学びたい内容が含まれているか、実践的な内容かどうかを確認しましょう。
講師:経験豊富なブリーダーや獣医師など、専門性の高い講師陣が揃っているか確認しましょう。
サポート体制:職支援、独立開業支援など、卒業後のサポート体制が充実しているか確認しましょう。
費用:入学金、授業料、教材費などを確認し、自分の予算に合っているか検討しましょう。
多くの学校では、資料請求や学校説明会を実施していますので、積極的に活用して情報収集することをお勧めします。
ブリーダー養成学校以外にも、動物専門学校、愛玩動物飼養管理士の資格取得講座など、ブリーダーに役立つ知識や技術を学べる場はたくさんあります。また、インターネット上にも、ブリーダーに関する情報サイトやオンラインサロンなどがありますので、活用してみましょう。
第一種動物取扱業とは何ですか?
第一種動物取扱業とは、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)に基づいた、動物の販売、保管、貸出し、訓練、展示などを行う営業を指します。
第一種動物取扱業の具体的な業務
販売業務 : 犬、猫、鳥、魚などのペットを販売する。
保管業務 : ペットホテル、ペットシッターなど、飼い主の代わりに動物を預かる。
貸出し業務 : 動物を一時的に貸し出す。
訓練業務 : しつけ教室など、動物の訓練を行う。
展示業務 : 動物園、水族館など、動物を展示する。
競りあっせん業務:動物の競りを仲介する業務。
これらの業務を営むには、都道府県知事または政令指定都市市長への登録が必要です。
(※動物の種類や事業規模によっては第二種動物取扱業になる場合があります。)
第一種動物取扱業を取得するメリット
信頼性 : 動物取扱業の登録を受けていることは、顧客からの信頼獲得に繋がります。
法令遵守 : 動物愛護管理法に基づいた適正な飼育・管理を行うことで、動物福祉に貢献できます。
社会的責任 : 動物の販売・保管・貸出し等を行う上で、社会的責任を果たすことができます。
登録に必要な要件
年齢 : 20歳以上であること
知識・経験 : 動物の取扱いに関する知識・経験があること(目安として、概ね2年以上の実務経験)
施設 : 動物の種類や数に応じた適切な広さ、構造、設備を備えた施設を有すること
動物取扱責任者 : 施設ごとに、常勤の動物取扱責任者を設置すること
登録手続きの流れ
申請書類の準備 : 申請書、施設の構造図、業務内容説明書などを用意します。
申請書の提出 : 事業所の所在地を管轄する都道府県知事または政令指定都市市長に提出します。
審査 : 書類審査、現地調査などが行われます。
登録 : 審査に合格すると、動物取扱業の登録証が交付されます。
注意点
- 登録は5年ごとに更新が必要です。
- 動物愛護管理法の改正により、要件が厳格化されています。最新の情報を確認するようにしましょう。
- 動物取扱業の登録は、動物の命を預かる上で、非常に重要なものです。動物福祉に配慮し、適正な飼育・管理を行うように心がけましょう。
不明な点があれば、お住まいの自治体の担当窓口や、専門家(獣医師、行政書士など)に相談することをおすすめします!
動物取扱責任者とは
動物取扱責任者とは、動物愛護管理法に基づき、第一種動物取扱業を行う事業所ごとに置かなければならない責任者のことです。簡単に言うと、動物取扱業を行う上で、動物の健康と安全を守り、適正な飼育管理を行う責任を負う人のことを指します。
動物取扱責任者の役割
動物の健康と安全の確保 : 動物の健康状態を常に把握し、病気や怪我の予防、適切な治療を行う。飼育環境の衛生管理、安全確保にも配慮する。
適正な飼育管理 : 動物種や個体に応じた飼育施設の設置、給餌、運動、休息などの適切な飼育管理を行う。
従業員への指導監督 : 従業員に対して、動物の取扱い、飼育管理、法令遵守に関する指導監督を行う。
関係法令の遵守 : 動物愛護管理法をはじめとする関係法令を遵守し、適切な事業運営を行う。
客対応 : 動物の購入者や預託者に対して、飼育方法や健康管理に関する適切なアドバイスを行う。
動物取扱責任者の資格要件
動物取扱責任者になるためには、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
獣医師 : 獣医師免許を持っている者
愛玩動物飼養管理士 : 愛玩動物飼養管理士の資格を持っている者
実務経験者 : 動物の取扱いに関する実務経験が2年以上ある者(動物の種類や事業内容によって異なる場合があります)
動物取扱責任者の重要性
動物取扱責任者は、動物の命を預かる事業を行う上で、非常に重要な役割を担っています。適切な知識と経験を持ち、責任感を持って業務にあたることで、動物福祉の向上に貢献することができます。
動物取扱責任者を目指す方は、動物に対する愛情と責任感を持つことはもちろんのこと、常に最新の知識や技術を習得する努力を続けることが大切です。
まとめ
何度も申し上げますが、日本で犬のブリーダーになるための資格や免許はありません。しかし、ブリーダーになるためには、法律の遵守、専門知識とスキルの習得、倫理的な責任感、そして継続的な学習が求められます。これらの要素をすべて満たし、動物の福祉を最優先に考えることが、優れたブリーダーとしての成功の鍵となります。また、日本でブリーダーを設置するためには、動物取扱業の登録を行い、適切な施設を整備し、法律に基づいた動物管理を行うことが必要です。さらに、自治体の規制や動物福祉に関する要件を十分に理解し、遵守することが求められます。これらの条件を満たし、責任を持って動物の繁殖とケアを行うことが、健全なブリーダー活動の基盤となります。