日本におけるペットショップの現状

皆さんは、ペットショップに行ったことはあるでしょうか?動物好きの方なら一度は訪れたことがあるのではないでしょうか。

半世紀前であれば、百貨店の屋上に遊戯施設と共に必ずと言って良いほど、ペットショップが併設されており、犬や猫などの小動物が販売されていました。当時のことを思い出して見ると、ペットショップで販売されている動物は、物であり商品でしかなかったように感じます。

しかし、最近改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」によりペットショップでの犬や猫の販売に対する規制が強化され、ペット先進国である欧米諸国に一歩近づいたのではないかと思います。

そこで今回は、動物愛護の観点から、「日本におけるペットショップの現状」について、その課題と変化、そして将来について少し考えたいと思います。

目次

ペットショップの課題と変化

日本のペットショップは、可愛い家族との出会いの場である一方、近年、その現状に厳しい目が向けられています。ここでは、販売方法、動物福祉、法律、今後の展望といった観点から現状を解説し、課題について考えたいと思います。

販売方法の変化(対面販売からインターネット販売へ)

従来、ペットショップの店舗で子犬や子猫を直接見て購入するのが一般的でした。しかし近年、インターネット販売が増加しており、広い範囲からペットを選べるメリットがある一方、健康状態や性格を見極めにくいというデメリットも
存在し、また、インターネット販売による飼育放棄の増加も社会問題となっております。

動物福祉の変化(改善の兆しと残る課題)

狭いショーケースによる展示販売は、動物にストレスを与えるため、改善が求められています。一部店舗では、ガラス張りのケージをなくし、犬猫が自由に過ごせるスペースを設けるなど、 環境エンリッチメントを取り入れる動きも出てきています。

ペットショップに子犬や子猫を供給する繁殖業者の中には、劣悪な環境で飼育を行う悪質な業者も存在します。しかし、動物愛護管理法の改正により、飼育環境の基準が厳格化されましたが、依然として課題は山積みです。

動物愛護法による規制強化と消費者の意識改革

2013年、2020年の動物愛護管理法改正により、犬や猫は生後56日を経過してからでなければ販売ができないなどの飼育環境や販売方法に関する規制が強化されました。しかし、欧米諸国と比較すると、日本の動物愛護法は遅れているという指摘もあります。法整備だけでなく、飼い主の意識改革も重要な課題になっています。

今後の展望(多様化するペットとの出会い方)

処分される犬や猫を減らすため、動物保護団体から犬や猫を譲り受けるという、いわゆる、保護犬・保護猫の譲渡による飼い主が増えてきています。また、繁殖の専門家であるブリーダーから、犬種や猫種の特性をよく理解した上で購入する人も増えています。近年、こうした犬や猫との出会い方が多様化してきています。

課題と変化のまとめ

日本のペットショップは、動物福祉の観点から、改善すべき点が多く残されています。また、法律の改正や、消費者の意識変化によって、ペットショップを取り巻く環境は変わりつつあります。

今後、ペットショップは、動物福祉を最優先に考え、飼い主のニーズに応えることができる存在へと変化していくことが求められています。

ペットは「商品」ではなく、「命」です。ペットショップで動物を購入する際は、その背景や飼育環境に目を向け、責任と愛情を持って家族に迎えることが大切です。

日本のペットショップの問題点


日本のペットショップは、愛らしい動物との出会いの場を提供する一方で、いくつかの深刻な問題点を抱えています。そのあたりの問題を少し深堀したいと思います。

動物福祉の軽視

1.劣悪な繁殖環境

狭いケージに閉じ込められ、十分な運動や日光浴、グルーミングを受けられない状況や、近親交配による遺伝疾患のリスク増加。また、無計画な繁殖による殺処分数の増加など、劣悪な繁殖環境に対する社会的な問題が発生しています。

2.展示販売

ガラスケース内での展示は、ペットにストレスを与え、健康問題を引き起こす可能性かあります。また、人との触れ合いが不足し、社会化が不十分なまま販売されることも問題視されています。

3.早期離乳

動物愛護管理法の改正により規制の対象になっているにもかかわらず、子犬や子猫が生後56日を待たずに親から引き離されることで、免疫力や社会性が十分に発達しないまま販売されるケースも多々あります。

販売方法の問題

1.衝動買い

可愛さに惹かれて衝動的に購入し、飼育放棄に繋がるケースが社会的な問題となっており、また、飼育に必要な知識や費用に対する理解不足から飼うことを放棄した結果、保護犬や保護猫の増加にもつながっています。

2.インターネット販売

インターネット販売では、対面でのやり取りがないため、ペットの状態や性格を十分に確認できなかったり、販売後のフォロー体制が整っていない場合も多くあり、結果的に飼育放棄になるケースも存在します

法規制の不十分さ

1.動物愛護管理法の限界

動物愛護管理法が改正されても飼育環境の基準が曖昧で、罰則も軽いため、繁殖業者への規制が不十分で、悪質なペット販売が後を絶たない状況にあります。

2.トレーサビリティの欠如

動物愛護管理法の2019年の改正により犬や猫に対するマイクロチップの装着が義務化されましたが、まだ法改正から子が浅いこともあり、犬や猫の出身や飼育履歴が追跡できないため、現在のところ、悪質な繁殖業者を特定しにくい状況にあります。

消費者側の問題

1.消費者の安易な購入

消費者の中には、価格の安さだけで犬や猫を選ぶ購入者も多く存在します。また、ペットショップの責任を問うことなく、安易に購入してしまうケースも多く存在します。

2.消費者の命に対する責任感の欠如

消費者の中には、命に対する責任感の欠如から飼育放棄や虐待の問題が社会的な問題となっています。そもそも、犬や猫といったペットの一生を共に過ごすという意識が不足している消費者も決して少なくありません。

その他

ペットショップから犬や猫の健康状態や性格に関する情報が十分に提供されないといった情報提供不足や販売後の飼育相談や医療サポートなどのアフターフォローの不足も大きな問題です。

これらの問題点の解決のためには、「動物愛護」に関連する法規制の強化や消費者意識向上、そしてペットショップ側の意識改革が不可欠になってきます。

私たちは、”可愛い”だけで動物を購入するのではなく、命に対する責任と愛情を持って向き合っていく義務があることを忘れないようにしましょう。

法規制強化によるペットショップの将来

「動物愛護」に関連する法規制の強化は、ペットショップのあり方、ひいてはその将来を大きく左右する要素となります。ここでは、「動物愛護」に関連する法規制強化が日本のペットショップの将来に及ぼす影響について、プラス面とマイナス面、そして課題を交えてお話ししたいと思います。

プラス面

1.動物福祉の向上

飼育環境基準の厳格化や繁殖制限によって、劣悪な環境で飼育されるペットが減少し、動物福祉の向上が見込めます。
また、動物の健康状態の改善や、販売されるペットの質の向上にも繋がる可能性があります。

2.消費者保護

販売時の情報開示が義務付けられることで、消費者はペットの健康状態や性格、出身などを事前に把握できるようになり、衝動買いを抑制できます。また、販売後のトラブル減少にも繋がり、消費者保護に貢献します。

3.健全な市場形成

法規制強化によって悪質な繁殖業者や販売業者が淘汰され、動物福祉を重視した健全なペットショップが残りやすくなります。これは、長期的に見ても消費者からの信頼獲得にもつながり、市場全体の底上げが期待できます。

マイナス面

1.ペット価格の上昇

飼育環境の改善や管理コストの増加は、販売価格に転嫁される可能性があり、ペットの価格上昇に繋がることが懸念されます。結果として、ペット飼育を希望する人にとって経済的なハードルが高くなる可能性も考えられます。

2.ペットショップの経営難

法規制への対応や管理コストの増加は、特に小規模なペットショップにとって経営を圧迫する要因となり得ます。そして、経営難による閉店や、事業規模の縮小なども予想されます。

3.違法な繁殖・販売の増加

法規制強化によって、正規のルートでのペット入手が困難になることで、違法な繁殖や販売が増加する可能性も懸念されます。

今後の課題

1.実効性のある法整備と厳格な運用

動物福祉を向上させるためには、抜け穴のない実効性のある「動物愛護」に関連する法整備と、それを厳格に運用していく体制作りが必須になってきます。

2.消費者への啓蒙活動

「動物愛護」に関連する法規制の効果を高めるためには、消費者が責任ある犬や猫の飼育について理解を深め、倫理的なペットショップを選択することが重要になってきます。また、動物福祉に関する教育や情報提供の強化も必要になってきます。

3.保護犬・猫の譲渡の促進

ペットショップだけに頼らない保護犬や保護猫の譲渡会における犬や猫との出会いの場を提供することで、殺処分数の減少や動物福祉の向上にもつながっていきます。また、「動物愛護」に関連する法規制の強化は、ペットショップのあり方を大きく変える可能性を秘めています。動物福祉の向上と市場の健全化を実現するために、関係者全体で課題に取り組み、より良い未来を目指していく必要があるでしょう。

海外のペットショップとの比較

日本のペットショップの現状をより深く理解するためには、海外の状況と比較することが有効です。ここでは、いくつかの観点から比較を行い、日本のペットショップの課題や進むべき方向性を考えてみましょう。

動物福祉に対する意識

(欧米諸国)

欧米諸国では、動物福祉に対する意識が高く、ペットは家族の一員という考え方が浸透しています。また、動物虐待は厳しく罰せられ、ペットショップに対する規制も日本より厳しい傾向にあります。例えばイギリスではペットショップでの犬猫の販売が禁止されており、ブリーダーや保護施設からの購入が一般的になっています。

(日本)

日本では、動物福祉に対する意識は高まりつつありますが、犬や猫などのペットを「物」として扱う考え方も根強く残っています。動物愛護管理法の改正により規制は強化されていますが、欧米諸国と比較すると、まだ十分とは言えない状況にあります。

販売形態

(欧米諸国)

欧米諸国では、ペットショップでの生体展示販売は少なく、ブリーダーや保護施設からの購入が主流です。また、
事前に飼育環境やペットの性格などを確認できるため、ミスマッチを防ぐことにつながっています。

(日本)

日本では、生体展示販売が一般的ですが、近年では、動物福祉への配慮から、動物愛護管理法の改正により展示スペースの拡大やガラスケースの廃止などの改善の動きも見られます。また、保護犬や保護猫の譲渡会や、保護犬カフェなども徐々に広がりを見せています。

規制と法整備

(欧米諸国)

欧米諸国では、繁殖業者に対する規制が厳しく、許可制や頭数制限などが設けられている国も多いです。また、犬や猫などペットの販売に関する情報開示も義務付けられており、消費者は安心して購入することができます。

(日本)

日本では、動物愛護管理法の改正により、繁殖業者への規制や情報開示の義務化などが進められていますが、欧米諸国に比べると規制は緩やかです。違法な繁殖や販売を根絶するためには、更なる法整備の強化が必要です。

消費者の意識

(欧米諸国)

欧米諸国では、ペットショップでの購入よりも、保護施設からの引き取りやブリーダーから直接購入するケースが多く見られます。また、価格よりも、ペットの性格や飼育環境を重視する傾向が強いです。

(日本)

日本では、ペットショップでの購入が一般的ですが、近年では、保護犬・猫の譲渡に対する関心も高まっています。なお、命の責任、飼育費用、飼育環境などについて、消費者が事前にしっかりと考えることが何よりも一番大切です。

最後に、日本のペットショップの未来

海外の状況を踏まえ、日本のペットショップでは、動物福祉の向上、消費者保護の強化、そして健全な市場形成に向けて、更なる進化が求められています。また、動物福祉を最優先に考え、展示販売の見直しや、ブリーダーや保護施設との連携強化などが求められています。

日本のペットショップには、情報公開の透明化が求められており、ペットの出身や飼育履歴、健康状態などの情報を積極的に開示することで、消費者の不安を解消する必要があります。

日本の消費者には、飼育放棄防止の観点から飼育に必要な知識や費用、責任について啓蒙活動を行い、安易な購入を抑制する必要があります。

日本でも、動物福祉に対する意識の高まりとともに、ペットショップのあり方に変化が求められています。海外の事例を参考にしながら、動物と人間が幸せに共存できる社会を目指していく必要があります。理想かも知れませんが、犬や猫の殺処分ゼロの社会が来ることを目指して努力をしていきましょう!

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