「トリマー」と聞くと、犬の美容師さんと言うイメージかも知れません。確かに、犬のシャンプー、カット、トリミングと言った、人間で言えば美容室のような仕事が主な仕事になってきます。しかし、トリマーの仕事はそれ以外にも皮膚や耳、目などに異常がないかという健康状態のチェックや飼い主さんからの犬のコンディションなどの情報収集、反対に飼い主さんへの健康に関するアドバイスと言った獣医さんに近い仕事も含めてトリマーの仕事になります。
そこで今回は、そのようなトリマーの仕事についての概要とトリマーになる方法、そしてトリマーの仕事のメリットとデメリットについてを少しお話をさせていただきたいと思います。
トリマーの基本的な仕事
トリマーの基本的な仕事は、主に犬の美容と健康を維持するための専門職になります。具体的な仕事内容につきましては、以下にまとめてみましたので、ご覧ください。
シャンプーとブロー
シャンプー:犬の皮膚や被毛の状態に合わせたシャンプーを選び、丁寧に洗います。これにより、汚れや皮脂を取り除きます。
ブロー:シャンプー後にドライヤーなどで毛を乾かし、毛玉ができないようにしっかりとブラッシングを行います。
カットとトリミング
全身カット:犬種やオーナーの希望に合わせて、全身の毛をカットします。スタンダードなスタイルからオリジナルスタイルまで、トリマーの技術が求められます。
部分カット:顔や耳、足の周りなど、特定の部分だけを整えることもあります。
爪切りと耳掃除
爪切り:犬の爪を適切な長さに切ります。過度に長くなると怪我の原因になるため、定期的にケアが必要です。
耳掃除:耳の中を清潔に保つために、耳掃除を行います。特に垂れ耳の犬は耳の中が蒸れやすいため、定期的なケアが重要です。
肛門腺絞り
犬には肛門腺という分泌腺があり、これが詰まると不快感を引き起こします。肛門腺を絞って内容物を排出する作業もトリマーの仕事です。
健康チェック
トリミングを行う際に、皮膚の状態、耳や目の異常、爪の異常などをチェックします。異常が見つかった場合、飼い主さんに知らせることで早期発見・治療に繋がることがあります。
顧客とのコミュニケーション
犬の状態やトリミングの要望を飼い主さんとしっかりコミュニケーションを取りながら進めます。飼い主さんの希望に応じたサービスを提供し、愛犬に最適なケアを行うことが求められます。
環境の整備
トリミング室の衛生管理、使用する道具の清掃や消毒も重要な業務です。清潔な環境を保つことで、犬の健康と安全を守ります。
ストレス管理
トリミングは犬にとってストレスになることがあるため、犬がリラックスできるように、優しい声かけや適度な休憩を入れることも大切です。
トリマーは、ペットの健康と美容を保つための重要な役割を担っています。また、技術だけでなく、動物への愛情や細やかな配慮も必要とされる職業です。
犬のトリマーになるにはどうすれば良いのですか?
犬のトリマーになるためには、専門的な知識と技術を習得する必要があります。以下は、トリマーになるための方法になりますので、参考にしてください。
トリマー養成学校や専門学校に通う
専門教育を受ける:トリマーになるためには、まずはトリミングに関する基礎知識や技術を学ぶ必要があります。日本にはトリマーを養成する専門学校や職業訓練校があり、通常は1〜2年のコースがあります。
カリキュラム:基礎的な犬猫のケア、シャンプー、カットの技術、道具の使い方、さらには動物の行動学や健康管理について学びます。インターンシップや実習が含まれることも多いです。
実務経験を積む
アシスタントからスタート:学校を卒業した後、トリミングサロンや動物病院でトリマーアシスタントとして働くのが一般的です。実務経験を通じて、学校で学んだ技術を実際に応用し、さらに技術を磨きます。
実際の現場で学ぶ:現場では、さまざまな犬種や性格の犬に対応することが求められます。経験を重ねることで、自信とスキルを向上させることができます。
資格を取得する
資格の取得:日本にはいくつかのトリマー資格があります。代表的なものとして「JKC(ジャパンケネルクラブ)」のトリマー資格や「愛玩動物飼養管理士」などがあり、資格を持つことで信頼性が高まります。
試験内容:トリマーの資格試験では、筆記試験に加え、実技試験も行われます。実技試験では、実際に犬をトリミングし、その技術や仕上がりが評価されます。
継続的な学習
トリミングの技術は日々進化しているため、新しいスタイルや技術を学び続けることが大切になってきます。トリマー養成セミナーやワークショップに参加したり、他のトリマーから学んだりすることで、新しい技術を習得し、自分の技術を磨いていくことが大切になってきます。
独立やキャリアアップ
トリミングサロンの開業:十分な経験を積んだ後、自分でトリミングサロンを開業することも可能です。独立には経営の知識も必要になるため、ビジネスの基本も学ぶことが役立ちます。
キャリアの発展:経験を積んだトリマーは、講師として学校で教えたり、コンテストに参加して技術を競うこともあります。
動物愛護やペットケアの知識も重要
動物愛護: トリミングは美容だけでなく、動物の健康を守る役割もあります。そのため、動物愛護やペットケアの知識も非常に重要です。
ペットとの信頼関係:トリマーとして成功するためには、ペットとの信頼関係を築くことが不可欠です。優しく丁寧に接することで、ペットもリラックスし、トリミングの際のストレスを減らすことができます。
これらの段階を踏むことで、トリマーとしてのキャリアを築くことができます。
トリマーに向いている人、向いてない人
トリマーに向いている人と向いていない人には、それぞれ異なる特性やスキルがあります。ただし、あくまでも一般論で、該当するすべての人がこれに当てはまるというものではないことを最初に言っておきたいと思います。一般的な見解として、それぞれの特徴をまとめてみましたので、参考程度にご覧ください。
トリマーに向いている人
1.動物が好きで、愛情深い人
犬や猫などの動物に対する強い愛情が必要です。動物に寄り添い、彼らの気持ちを理解しようとする姿勢が求められます。
2.忍耐力がある人
トリミングは時間がかかる作業であり、動物がじっとしていないことも多いです。辛抱強く、冷静に作業を続けられる人が向いています。
3.手先が器用な人
トリミングは細かい作業が多いため、手先の器用さが求められます。特に、シザーやクリッパーを使ったカット技術が必要です。
4.観察力が鋭い人
動物のわずかな変化や表情から、ストレスや不調を察知できる人が向いています。これにより、トリミング中の安全を確保できます。
5.コミュニケーションが得意な人
飼い主とのコミュニケーションが重要です。飼い主の希望を聞き取り、それをペットに反映させる能力が必要です。
6.体力に自信がある人
トリマーの仕事は体力的にハードです。立ち仕事が多く、犬や猫を抱えたりすることもあるため、体力が必要です。
7.清潔感がある人
清潔で衛生的な環境を保つことが大切です。自分自身が清潔感を持っていることも、トリマーとして重要です。
トリマーに向いていない人
1.動物に対して恐怖心がある人
動物に対する恐怖心があると、仕事を続けるのが難しくなります。犬や猫に触れることが苦手な場合、トリマーの仕事には向いていないかもしれません。
2.短気でせっかちな人
トリミングは時間がかかることが多く、動物が思うように動かないこともあります。せっかちな性格だと、ストレスを感じやすいでしょう。
3.手先が不器用な人
細かい作業が苦手な人や、手先が不器用な人には、トリミングの仕事は難しいかもしれません。
4.体力に自信がない人
体力的に弱い人や、長時間の立ち仕事が苦手な人は、トリマーの仕事が負担に感じることが多いでしょう。
5.コミュニケーションが苦手な人
飼い主との意思疎通がうまくいかないと、トリミングの仕上がりに満足してもらえないことがあります。コミュニケーションが苦手な人は、仕事でのストレスを感じやすいかもしれません。
6.動物の匂いや汚れに敏感な人
動物のシャンプーや掃除など、匂いや汚れと向き合う場面が多いため、それに対して敏感な人には向いていないかもしれません。
これらの特性を持つことで、トリマーとして成功しやすくなります。逆に、自分が向いていないと感じる場合は、他の職業を検討するのも一つの手です。
トリマーの仕事に関するメリットとデメリット
トリマーの仕事には、さまざまなメリットとデメリットがあります。これらを理解することで、トリマーとしてのキャリアをより現実的に捉えることができます。
トリマーのメリット
1.動物と触れ合える
動物が好きな人にとって、毎日ペットと触れ合えることは大きな喜びです。動物たちのケアを通じて信頼関係を築けるのは、やりがいを感じるポイントです。
2.技術が身につく
トリミング技術は専門的で、習得すれば貴重なスキルになります。この技術は一生の財産となり、キャリアアップや独立の際にも活かせます。
3.顧客の喜びが直接感じられる
ペットを綺麗に仕上げたときの飼い主の満足感や感謝の言葉を直接受け取ることができます。顧客の喜びを感じられるのは、仕事の大きなモチベーションになります。
4.創造性を発揮できる
犬種や顧客の要望に応じて、スタイリングやカットを工夫することができるため、創造性を活かした仕事ができます。トリミングは技術だけでなく、アートの要素も含まれています。
5.独立やフリーランスの道が開ける
技術と経験を積めば、自分でサロンを開業したり、フリーランスとして働くことも可能です。自分のペースで仕事ができる自由さが得られます。
6.動物の健康をサポートできる
トリミングを通じて、動物の健康状態をチェックし、早期に問題を発見できることがあります。動物の健康を守るという重要な役割を担うことができます。
トリマーのデメリット
1.体力的にハード
トリマーの仕事は体力を要します。長時間の立ち仕事や、動物を抱えたりする作業が日常的にありますので、身体への負担が大きいです。
2.労働時間が不規則
顧客のスケジュールに合わせる必要があるため、労働時間が不規則になることがあります。特に、繁忙期には長時間の労働が求められることがあります。
3.精神的なストレス
動物が不安やストレスを感じて暴れることもあり、それに対応することが精神的に負担となることがあります。また、飼い主の要望に応えるプレッシャーも少なくありません。
4.収入が安定しない可能性
特にフリーランスや個人でサロンを経営する場合、顧客の数に収入が大きく左右されます。収入が安定しない可能性があるため、経営の知識やリスク管理が必要です。
5.動物の健康問題に直面する
トリミング中に動物の健康問題に気づくことがありますが、場合によってはその対応が難しいこともあります。感情的に辛い場面に直面することもあるでしょう。
6.身体への負担が蓄積する
長年にわたってトリマーとして働くと、手や腰などに負担が蓄積することがあります。繰り返しの動作や無理な姿勢が原因で、職業病に悩まされる可能性もあります。
トリマーの仕事には、動物への愛情や技術を活かせる喜びがありますが、体力や精神力、そして収入の面でのリスクも考慮する必要があります。これらを総合的に判断して、自分に合ったキャリアプランを考えることが重要です。
まとめ
トリマーの仕事は、犬の美容と健康を守るための専門職であり、シャンプーやカット、爪切り、耳掃除、肛門腺絞りなどを通じてペットを清潔で快適な状態に保つことを目的とします。動物への深い愛情と信頼関係を築く能力が求められ、手先の器用さや観察力、忍耐力も必要です。トリミング技術は習得することで一生の財産となり、キャリアアップや独立の道も開けますが、体力的にハードであり、精神的なストレスや収入の不安定さというデメリットも存在します。それでも、愛犬と飼い主の笑顔を直接感じられるやりがいのある仕事であり、動物の健康をサポートするという重要な役割を果たす責任感と誇りが持てる職業です。