犬の耳は人間と同様にとても大切な臓器の一つです。耳は音を聞くためだけではなく、身体のバランスを取るためにも必要で、耳の病気により、音が聞こえなくなるだけではなく、病気によっては身体のバランスが取れなくなったり、めまいを引き起こす可能性もあります。また、犬がかかりやすい病気の中でも頻度の高いものとして挙げられるのが耳の病気です。
犬は耳のあたりを足で掻いたり、床や壁にこすりつけたすることで、かゆみを緩和させようとしますが、その行為が不衛生なことから耳の病気を悪化させてしまうケースがよくあります。また、犬が耳の病気にかかった際に、言葉がしゃべれない犬の見た目から病気にかかっていることに気づきにくく、分かった時にはすでに病気が進行している場合もあります。
そこで今回は、そうした愛犬の耳の病気から守るためにも必要な耳の病気の症状・治療方法・予防方法について、少しお話をさせていただきたいと思います。
愛犬の耳の病気とケアの方法について
犬の耳の病気には様々な種類があり、特に耳の構造が複雑な犬種は耳のトラブルが起こりやすいです。以下で一般的な耳の病気とケア方法について説明します。
犬の耳の病気
外耳炎
最も一般的な耳の病気で、耳の穴から鼓膜までの外耳道に炎症が生じる状態です。原因はアレルギー、細菌や真菌(カビ)の感染、異物(草の種など)、耳ダニなど様々です。症状には、耳をかく、頭を振る、耳から悪臭がする、赤みや腫れが見られるなどがあります。
中耳炎・内耳炎
外耳炎が進行すると、中耳や内耳に炎症が広がることがあります。中耳炎・内耳炎になると、頭を傾けたり、ふらついたりする神経症状が現れる場合があります。放置すると聴覚に影響を及ぼすこともあるため、早めの治療が必要です。
耳血腫
耳の外側の皮膚と軟骨の間に血液が溜まる状態です。耳を激しくかく、頭を振ることで耳の血管が破裂し、血がたまることが原因となります。耳の膨らみや痛みが見られ、治療には吸引や手術が必要な場合があります。
耳ダニ感染
特に子犬や多頭飼育の犬で見られることが多い耳ダニ(オトデクテス)が原因の感染症です。耳の中に黒い耳垢が多量に出て、かゆみを引き起こします。放置すると細菌感染を伴うことがあるため、適切な駆虫薬による治療が必要です。
耳のケア方法
犬の耳の健康を維持するためのケアはとても重要です。以下の方法で定期的にケアを行いましょう。
耳掃除
1.頻度
一般的には週に1~2回が目安です。外耳炎になりやすい犬種(垂れ耳の犬など)は特に注意しましょう。
2.方法
耳用のクリーナーをコットンやガーゼに染み込ませ、耳の内側を優しく拭き取ります。耳の中に直接クリーナーを垂らしても良いですが、無理に奥まで拭こうとせず、見える範囲だけを掃除します。
3.注意点
綿棒は耳道を傷つける可能性があるため使用しない方が良いです。また、耳の中に傷や炎症がある場合、無理に掃除しないで獣医師に相談してください。
耳を乾かす
水遊びやシャンプー後は、耳の中をよく乾かすことが大切です。湿ったままだと細菌や真菌が繁殖しやすく、外耳炎の原因となります。タオルやガーゼで軽く耳を拭き、可能であれば耳の外側をドライヤーの弱冷風で乾かします。
定期的なチェック
耳の中に赤み、腫れ、耳垢の色や匂いに異常がないかを日常的に観察することが大切です。異常を感じたら早めに動物病院で診てもらいましょう。
耳を触る練習
耳を触られることに慣れていない犬の場合、耳掃除が難しくなります。普段から耳を優しく触って、耳掃除の練習をしておくと良いです。
病気を予防するために
1.定期的な健康診断
病気の早期発見のために、定期的に動物病院で耳の健康チェックを受けましょう。
2.食事とアレルギー対策
食事や環境が原因でアレルギーが起こり、耳の炎症につながることがあります。アレルギーが疑われる場合は、獣医師と相談して対策を考えましょう。
耳のケアは健康維持に欠かせません。正しい知識を持って定期的なケアを行い、異常を感じた際には早めに専門家に相談することが大切です。
日常の生活で注意すること
犬の耳の健康を保つため、日常生活で以下の点に注意すると良いでしょう。
清潔な環境を保つ
1.寝床や居場所
犬が過ごす場所を清潔に保つことは、耳の健康にとっても大切です。ダニやホコリが耳のトラブルを引き起こすことがあるため、犬の寝床やクッション、ブランケットなどは定期的に洗濯し、掃除しましょう。
2.屋外活動後のケア
散歩やアウトドア活動の後は、犬の耳の中に汚れや植物の種などが入っていないかチェックしてください。特に草むらや森の中で遊んだ場合は、念入りに確認しましょう。
水濡れに注意
1.シャンプーや水遊び
シャンプーや水遊びの後に耳の中が湿った状態だと、細菌や真菌が繁殖しやすくなります。水に濡れた後は、必ず耳の中をタオルやガーゼで優しく拭き、できればドライヤーの弱冷風で乾かしましょう。
2.防水対策
に濡れやすい環境で遊ぶ場合、耳を保護するための防水キャップやヘッドバンドを使うのも有効です。
耳をこすらない・刺激しない
1.耳をかく行動に注意
犬が頻繁に耳をかいたり、頭を振っている場合、耳の中に異常がある可能性があります。耳をかきすぎると、炎症や傷が悪化する恐れがあるため、気づいたら早めに獣医師に相談しましょう。
2.耳掃除のやりすぎに注意
耳掃除はやりすぎると、逆に耳の中を傷つけたり、耳の中のバリア機能を低下させることがあります。無理に奥まで掃除せず、目に見える範囲で軽く行うようにしてください。
アレルギー対策
1.食事管理
食物アレルギーが耳の炎症を引き起こす場合があります。アレルギー症状が疑われる場合、獣医師と相談し、食事の見直しを検討してください。特に穀物や特定のタンパク質がアレルギーの原因となることがあります。
2.環境アレルゲン
ダニやホコリ、花粉などの環境アレルゲンも耳のトラブルを引き起こすことがあります。定期的に掃除機をかけ、空気清浄機を使うなど、室内の環境を整えることも大切です。
定期的なチェックとケア
1.耳の観察
日常的に耳の中を観察して、赤み、腫れ、異臭、耳垢の増加などの異常がないかを確認しましょう。異常を感じた場合は、早めに獣医師に相談することが重要です。
2.トリミング
毛が耳の中や周りに多い犬種は、耳の通気性が悪くなり、湿気がこもりやすくなります。定期的にトリミングして耳の中の通気を良くしてあげましょう。
ストレスをためない
ストレス管理: ストレスが原因で免疫力が低下し、耳のトラブルを引き起こすこともあります。犬に十分な運動や遊びの時間を与え、リラックスできる環境を整えることが大切です。
これらのポイントを日常生活で意識し、耳のケアを適切に行うことで、耳の病気を予防し、愛犬の健康を守ることができます。
愛犬の耳の健康のために良い食べ物
犬の耳の健康に良い食べ物は、免疫力を高め、炎症を抑える栄養素を含んだものです。耳のトラブルにはアレルギーや免疫力の低下が関与することが多いため、耳の健康をサポートするための食事には、特定のビタミンやミネラル、オメガ脂肪酸が重要です。以下、耳の健康に良いとされる食べ物とその栄養素について説明します。
オメガ-3脂肪酸を含む食品
オメガ-3脂肪酸には抗炎症作用があり、アレルギーや炎症による耳のトラブルを軽減するのに役立ちます。
1.魚(サーモン、イワシ、マグロ)
DHAやEPAを豊富に含み、免疫力を強化し、炎症を抑える効果があります。ドッグフードにも魚を主成分としたものが多くあります。
2.亜麻仁油やサーモンオイル
ドライフードに数滴垂らすことで、手軽にオメガ-3脂肪酸を摂取させることができます。
ビタミンAを含む食品
ビタミンAは皮膚と粘膜の健康を維持し、耳の内側の皮膚を健やかに保つのに役立ちます。
1.レバー
鶏レバーや牛レバーには豊富なビタミンAが含まれています。ただし、過剰摂取すると健康に害を及ぼす可能性があるため、適量を守りましょう。
2.にんじん、かぼちゃ
ベータカロテンが豊富で、体内でビタミンAに変換されます。調理して柔らかくしたものを少量与えると良いです。
ビタミンEを含む食品
ビタミンEは抗酸化作用があり、免疫機能をサポートします。耳の炎症を予防し、健康な皮膚を保つのに効果的です。
1.ナッツ類(無塩・無添加)
アーモンドやヒマワリの種にはビタミンEが豊富ですが、犬に与える際には細かく刻んだり、少量にとどめることが大切です。
2.オリーブオイル
食事に少量加えることで、ビタミンEの摂取をサポートできます。
ビタミンCを含む食品
ビタミンCは免疫力を高め、炎症を抑える効果があります。体内で生成できる犬も多いですが、食事からの補給も耳の健康をサポートします。
ブルーベリー、イチゴ
抗酸化作用が高く、ビタミンCを含む果物です。少量をおやつとして与えると良いでしょう。
プロバイオティクス食品
腸内環境が整うと免疫力が高まり、アレルギー反応が軽減される場合があります。健康な耳の維持にも、腸内環境のバランスは重要です。
ヨーグルト
無糖・無添加のものを選び、少量を食事に混ぜると腸内環境をサポートします。ただし、乳製品にアレルギーがある犬には与えないようにしましょう。
良質なタンパク質
タンパク質は皮膚や毛の健康に不可欠です。アレルギーを引き起こしにくい、消化の良いタンパク質源を選ぶことが大切です。
鶏肉、ラム肉、魚
アレルギーが少ないタンパク質として推奨されます。アレルギーの疑いがある場合は、獣医師に相談して食事内容を決めましょう。
水分補給
水分不足は耳の中の乾燥やかゆみを引き起こしやすくなります。耳の健康を維持するためには、適切な水分摂取が重要です。ウェットフードや水分量の多い野菜(きゅうり、スイカなど)を食事に取り入れると、水分補給の一助となります。
注意点
耳の健康のための食事改善を行う際は、アレルギーや消化不良のリスクに注意し、少量から始めて様子を見ることが大切です。また、特定の食材やサプリメントの導入については、獣医さんに相談するのが安心です。
これらの食品をバランスよく取り入れることで、耳の健康をサポートし、トラブルの予防に役立てましょう。
まとめ
犬の耳の健康を守るためには、定期的な耳掃除と清潔な生活環境の維持、シャンプーや水遊び後の耳の乾燥、アレルギー対策を含むバランスの良い食事、十分な水分補給、そして耳の異常を早期に発見するための観察が必要です。また、適度な運動やストレスをためない生活を心がけ、異常を感じたら早めに獣医師に相談することが大切です。