昨日まで暑い暑いと思っていたら、あっという間に寒い寒い冬がやってきました。人間にとっても寒い冬はインフルエンザやノロウイルスなどの感染症が流行の季節になります。犬にとっても同じく冬は病気やケガになりやすい季節でもあります。
シベリアンハスキーやサモエドのような寒い地域原産の犬種は別として、チワワやトイプードルのような小型犬に属する犬種のほとんどが暖かい地域を原産国としており、寒さに弱い弱い犬種になります。また、寒さに強い犬種であっても、特に幼犬や高齢犬、基礎疾患を持つ犬は体温調節が難しい場合があるため寒さには注意が必要です。
そこで今回は、そんな冬を迎えるにあたって、「愛犬が冬にかかりやすい病気とその予防法」についてのお話をさせていただきたいと思います。
冬にかかりやすい病気と予防法
冬は犬にとって特に健康リスクが高まる季節です。冬は寒さや乾燥が原因で、いくつかの病気や健康問題が発生しやすくなります。以下は、犬が冬にかかりやすい主な病気についての詳細です。
泌尿器系疾患
冬に犬がかかりやすい泌尿器系疾患には、膀胱炎、尿路結石、尿路感染症などがあります。これらの疾患は、寒さによる水分摂取量の減少が主な原因です。
1.膀胱炎
膀胱炎は、膀胱の粘膜に炎症が起こる病気で、特に冬に多く発生します。水分摂取が減ると尿が濃くなり、細菌感染を引き起こしやすくなります。メス犬は尿道が短いため、膀胱炎になりやすい傾向があります。
2.尿路結石
尿路結石は、尿中のミネラル分が結晶化して形成されるもので、膀胱や尿道に結石ができることがあります。特にオス犬は長い尿道を持つため、結石が詰まりやすく、排尿困難を引き起こすことがあります。
3.尿路感染症
冬季には免疫力が低下しやすく、これもまた泌尿器系の感染症を引き起こす要因となります。特に子犬の場合は、免疫力が低下しやすく、泌尿器系の感染症にかかりやすくなります。
予防法
1.水分補給
常に新鮮な水を用意し、水分摂取を促すことが重要です。水を少し温めたり、食事にお湯を加えたりすることで、水分補給を促進できます。
2.運動
冬でも定期的に散歩を行い、運動不足にならないよう心掛けることが大切です。運動不足は尿の排出頻度を減少させ、膀胱内に老廃物や細菌が蓄積される原因となります。
3.トイレ環境の整備
犬が自由にトイレに行ける環境を整えることで、排尿を我慢することを防ぎます。特に冬場は寒さからトイレに行きたがらないこともあるため、トイレの位置やアクセスしやすさを見直すことが大切です。
4.食事管理
バランスの取れた食事は尿のpHバランスを保ち、結石形成を防ぐ助けになります。シュウ酸を多く含むほうれん草など特定の食材を避けることで結石のリスクを減少させることができます。
5.健康チェック
日常的に犬の排尿状況を観察し、異常(頻尿や血尿など)があれば早めに獣医師に相談することが大切です。早期発見と治療は病気の進行を防ぐために非常に効果的です。
これらの対策を講じることで、冬の季節における犬の泌尿器系疾患のリスクを低減し、健康的な生活を送る手助けとなります。
関節疾患
犬が冬にかかりやすい関節疾患には、関節炎、変形性関節症、膝蓋骨脱臼などがあります。これらの疾患は、寒さによる血行不良や運動不足が影響し、特に高齢犬や肥満犬に多く見られ注意が必要です。歩くのを嫌がったり、足を触られるのを嫌がる場合は、関節疾患の可能性がありますので、冬は特に注意して観察を心がけましょう。
1.関節炎
冬になると気温が低下し、犬の筋肉や関節の血流が滞りやすくなります。この状態で急に運動をすると、関節に負担がかかり、関節炎を引き起こすことがあります。具体的な症状としては、歩くのを嫌がったり、足を引きずったりすることが挙げられます。
2.変形性関節症
変形性関節症は老化とともに進行する疾患で、関節の構造が変化し、痛みを伴います。特に膝などの可動性の高い関節が影響を受けやすいです。肥満や過度な運動もリスク要因となります。
3.膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼は、小型犬に多く見られる疾患で、膝のお皿(膝蓋骨)が正常な位置から外れることによって発生します。これもまた、寒さによる筋肉のこわばりや運動不足が影響します。
予防法
1.適切な体重管理
肥満は関節への負担を増加させるため、適正体重を維持することが重要です。特に冬場は運動量が減るため、食事管理にも注意が必要です。
2.温度管理
室内の温度と湿度を適切に保ち、犬が快適に過ごせる環境を整えます。また、散歩前にはホットタオルで関節を温めることで血行を促進し、動きやすくします。
3.適度な運動
寒い季節でも軽い散歩や室内でのエクササイズを取り入れ、筋肉を維持することが大切です。急激な運動は避けつつも、日常的に体を動かす習慣をつけましょう。
4.定期的なトリミング
足裏の毛が長くなると滑りやすくなるため、定期的にトリミングしておくことで怪我のリスクを減少させます。
これらの予防策を講じることで、冬場でも愛犬の健康を守り、関節疾患のリスクを軽減することができます。日々の観察とケアが重要ですので、愛犬の様子に注意しながら適切な対策を行ってください。
呼吸器疾患
冬は犬にとって呼吸器疾患が発症しやすい季節です。寒さや乾燥した空気が犬の呼吸器系に影響を与え、特に免疫力が低下している犬や高齢犬では症状が悪化しやすくなります。
1.ケンネルコフ(犬カゼ)
ケンネルコフは、ウイルスや細菌によって引き起こされる呼吸器系の疾患で、頑固な咳を特徴とします。特に冬に流行しやすい病気になります。
2.鼻気管炎
鼻気管炎は、上部気道の感染症で、くしゃみや鼻水が主な症状です。免疫力が低下している犬では重症化する可能性があります。
3.気管支炎
気管支炎は、冷たい空気が気道の粘膜を刺激し、炎症を引き起こすことがあります。特に高齢犬では症状が悪化しやすい傾向にあります。
4.肺炎
肺炎は、冬の寒さや湿度低下による乾燥は、肺炎のリスクを高めます。特に高齢犬や免疫力が低下している犬は注意が必要になります。
予防法
1.室内環境の管理
室内の温度と湿度を適切に保ち、乾燥を防ぐことが重要です。加湿器を使用して乾燥を防ぎ、暖かい環境を提供することで、犬の呼吸器系への負担を軽減できます。
2.ワクチン接種
ケンネルコフやその他の感染症に対するワクチン接種を定期的に行うことで、重症化を防ぐことができます。
3.定期的な運動
寒い時期でも適度な運動を心掛けることが大切です。散歩は温かい時間帯に行うようにし、室内で遊ぶ時間も設けると良いでしょう。
4.水分補給
新鮮な水を常に用意し、飲みたくなる工夫をすることが必要です。例えば、水を少し温めたり、お湯でフードをふやかして水分補給を促す方法があります。
5.健康診断と早期対応
定期的な健康診断を受けることで早期発見につながります。また、犬の咳やくしゃみなどの症状に注意し、異常を感じた場合は早めに獣医師に相談することが大切です。
これらの対策を講じることで、冬場でも愛犬の健康を守り、呼吸器疾患のリスクを減少させることができます。日頃から愛犬の様子を観察し、小さな変化にも注意を払うことが大切です。
皮膚疾患
冬の季節は犬にとって皮膚疾患が発生しやすい時期です。特に乾燥した空気や暖房器具の使用が影響し、さまざまな皮膚トラブルを引き起こすことがあります。以下に、冬に特に注意が必要な犬の皮膚疾患とその予防法について詳しく説明します。
1.乾燥肌
冬は空気が乾燥し、暖房器具の使用によってさらに湿度が低下します。犬の皮膚は人間よりも薄く、乾燥しやすいため、皮膚のバリア機能が低下し、かゆみや炎症を引き起こすことがあります。特にお腹まわりや首もと、脚の付け根など被毛が薄い部分が影響を受けやすいです。
2.アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因や環境要因によって引き起こされる慢性的なかゆみを伴う疾患です。冬になると、室内の暖房による乾燥や埃がアレルゲンとなり、症状が悪化することがあります。特に柴犬やフレンチ・ブルドッグなど、アレルギー体質の犬種では注意が必要です。
3.膿皮症
膿皮症は、主にブドウ球菌などの皮膚の常在菌が異常増殖することで発生します。乾燥によって皮膚の保湿成分が失われると、細胞間に隙間ができ、そこに常在菌が侵入しやすくなります。これにより、かゆみや赤み、湿疹が現れます。
マラセチア性皮膚炎 マラセチアは酵母菌の一種で、皮脂を栄養源として増殖します。冬の乾燥で皮脂分泌が増えると、この菌が過剰に繁殖し、炎症を引き起こします。これにより、ベタつきやフケ、赤みなどの症状が見られます5。
予防法
1.保湿ケア
シャンプー後には必ず保湿剤を使用し、犬の皮膚を保護します。また、加湿器を使って室内の湿度を40%以上に保つことも重要です。
2.適切なシャンプー選び
低刺激性で保湿成分を含むシャンプーを選びましょう。シャンプー後にはコンディショナーでしっかりと保湿することもお勧めします。
3.栄養管理
栄養バランスの良いフードを与え、特に脂質やビタミンなど不足する栄養素を補うことが大切になってきます。特にオメガ脂肪酸などを含む食事は皮膚のバリア機能を高める効果がありますのでお勧めします。
4.定期的な獣医師の診察
皮膚トラブルが見られた場合は早めに動物病院で診察を受けることが重要です。特にアレルギー反応が疑われる場合は専門的な検査が必要になってきますので、早めの受診をお勧めします。
5.ストレス管理
飼い主さんの日常生活の変化によるストレスは犬にも影響します。難しいかも知れませんが、できるだけ安定した生活リズムを維持し、愛犬とのコミュニケーションを大切にしましょう。
冬は犬にとって厳しい季節ですが、適切なケアを行うことで健康的な生活を維持することができます。愛犬の状態をよく観察し、小さな変化にも注意を怠らないようにしてあげましょう。
循環器系疾患
冬に犬がかかりやすい循環器系疾患には、主に心臓病や高血圧が含まれます。寒さや乾燥した空気は、犬の心臓や血管に負担をかけるため、特に注意が必要です。寒冷環境では血管が収縮し、心臓にかかる負担が増加します。これにより、心臓疾患を持つ犬は症状が悪化する可能性があります。特に、高齢犬や肥満犬はリスクが高く、暖かい室内から寒い屋外へ移動するなどの急激な温度変化は、血圧の急上昇を引き起こし、ヒートショックを引き起こす危険性がありますので特に注意が必要です。
予防法
1.室内環境の管理
室温を適切に保ち(23〜26℃)、湿度を45〜65%に保つことで、犬が快適に過ごせる環境を整えます。加湿器を使用して乾燥を防ぐことも重要です。
運動と体重管理: 冬場は運動量が減少しがちですが、定期的な散歩や遊びの時間を設けて筋肉を維持し、肥満を防ぐことが大切です。特に高齢犬や心臓病のある犬は、運動不足によって症状が悪化する可能性があります710。
2.水分補給
冬は喉の渇きを感じにくくなるため、意識的に水分を摂取させる工夫が必要です。ぬるま湯を用意したり、食事に水分を加えることで飲水量を増やすことができます。
3.定期的な健康診断
特に高齢犬や心臓病のリスクがある犬は、定期的な獣医さんによる健康診断を受けることで早期発見と治療につながります。異常を感じた場合は早めに受診することをお勧めします。
これらの対策を講じることで、冬場の循環器系疾患から愛犬を守ることができます。愛犬の健康状態に注意しながら、快適な冬を過ごさせてあげましょう。
まとめ
冬は寒さや乾燥が厳しくなるため、犬や猫を含むペットにとっても健康リスクが高まる季節です。特に冬にかかりやすい病気には、関節炎や呼吸器感染症、皮膚トラブル、低体温症、凍傷、消化器疾患などが挙げられます。これらの病気を予防するためには、寒さや乾燥に対する対策が欠かせません。
まず、関節炎は特にシニア犬に多く見られる病気で、寒さや湿気が原因で症状が悪化しやすくなります。犬の関節が硬くなり、痛みを感じることがあります。関節炎を予防するためには、寒さから犬を守ることが重要です。犬用の服やブーツを着用させることで、外出時に寒さから関節を守り、症状を軽減できます。また、運動不足にならないよう、適度な運動を続けることも大切です。
次に、呼吸器感染症は、冬の乾燥した空気によって呼吸器に負担がかかりやすく、咳やくしゃみ、鼻水などの症状を引き起こします。ウイルスや細菌が原因となることが多いため、感染を防ぐためには、屋内外の温度管理と適切な湿度を保つことが不可欠です。加湿器を使うことで空気の乾燥を防ぎ、犬や猫の呼吸器を保護することができます。
さらに、冬の乾燥した空気は犬や猫の皮膚トラブルも引き起こします。乾燥によって肌がカサカサになり、かゆみやフケ、炎症を招くことがあります。特にアトピー性皮膚炎の持病がある場合は、冬に症状が悪化することが多いため、保湿ケアが重要です。皮膚に潤いを保つために、保湿剤を使用したり、室内の湿度を適切に保つことで皮膚の健康を守りましょう。
また、冬の寒さは低体温症や凍傷のリスクを高めます。特に小型犬や短毛種の犬は寒さに弱く、低体温症にかかることがあります。震えや無気力などの症状が見られた場合は、すぐに暖かい場所に移動させ、体温を回復させることが必要です。凍傷は、足のパッドや耳、尾などが凍結してしまう状態で、寒冷地では特に注意が必要です。外出時には、犬用のブーツや服で寒さから体を保護し、長時間の外出を避けるようにしましょう。
最後に、冬は運動量が減少しがちなため、消化器疾患も発生しやすくなります。寒さによって胃腸の働きが鈍くなり、便秘や下痢などの症状が現れることがあります。これを防ぐためには、バランスの取れた食事と適度な運動を維持し、消化器官の健康をサポートすることが大切です。特に冬は免疫力が低下しやすいため、ビタミンやミネラルが豊富な食事を提供することで、体調を維持しましょう。
総じて、冬にかかりやすい病気の予防には、寒さと乾燥への対策が最も重要です。適切な温度管理や湿度の調整、栄養バランスの良い食事、そして日々のケアを徹底することで、冬の病気から犬や猫を守り、快適に過ごすことができるでしょう。