犬にとってビタミンは健康に不可欠な栄養素で、「炭水化物」「タンパク質」「脂肪」といった3大栄養素のように直接エネルギー源にはなりませんが、エネルギー代謝のサポートを行い、体の機能を整える役割があります。
犬にとって必要とされるビタミンは、A、D、E、K、B群、Cなどがありまが、肉や野菜などの自然食材だけでは、米国飼料検査官協会(AAFCO)の栄養基準を満たすために必要とされる量を摂取することは困難です。その点、市販のドッグフードにはビタミンが添加されており、ビタミン欠乏症になることは少ないとされています。ビタミンは犬の健康をサポートするために重要な役割を果たすため、栄養バランスの取れた食事を与えることが大切になります。
今回は、それぞれのビタミンの主な働きと必要量、不足や過剰摂取時の症状、そして、ビタミンを多く含む食材についての説明させていただきます。
脂溶性と水溶性の2分類
ビタミンは大きく分けて「脂溶性」と「水溶性」の2種類に分類することができます。脂溶性ビタミンはビタミンA、D、E、Kの4種類、水溶性ビタミンはビタミンB1、B2、ナイアシン、パントテン酸、B6、ビオチン、葉酸、B12、Cの9種類があります。
脂溶性ビタミンは体内で貯蔵されるため、過剰摂取による中毒症状のリスクがあります。一方、水溶性ビタミンは排泄されやすいため、通常は過剰摂取による中毒症状のリスクが低いですが、過剰な摂取も問題を引き起こす可能性があります。バランスの取れた食事を摂取することが重要です。
犬に必要なビタミンの働き
ビタミンA
犬にとってビタミンAは重要な栄養素であり、さまざまな健康機能に関与しています。以下に、ビタミンAの主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.視力維持
ビタミンAは視覚に不可欠な栄養素です。視覚に関わるタンパク質の一部として働き、網膜の機能を維持し、暗い環境での視力をサポートします。
2.免疫機能の強化
ビタミンAは免疫機能を正常に保つために必要な栄養素です。適切なビタミンAの摂取は、感染症や疾患に対する犬の免疫応答を支援します。
3.皮膚と被毛の健康維持
ビタミンAは皮膚と被毛の健康を維持するのに重要です。適切なビタミンAの摂取は、皮膚の保護と再生を促進し、被毛の輝きを保ちます。
4.成長と発達の促進
ビタミンAは成長と発達にも重要な役割を果たします。特に子犬や成長段階にある犬にとって、適切なビタミンAの摂取は骨や組織の正常な成長を支援します。
犬のビタミンAの必要量は、犬の年齢、体重、品種、活動レベルなどによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約2,272 IUですが、この量は個々の犬によって異なる場合があります。また、過剰なビタミンAの摂取は有害である可能性があるため、過剰摂取には注意が必要です。通常、バランスの取れた食事を与えることで、犬のビタミンAの必要量を満たすことができます。
ビタミンD
ビタミンDは犬の健康に不可欠な栄養素であり、骨や歯の形成や維持に重要な役割を果たしています。以下に、ビタミンDの主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.カルシウムとリンの吸収
ビタミンDは腸でのカルシウムとリンの吸収を促進します。これにより、骨や歯の強度と密度を維持し、適切な骨格を形成します。
2.骨の成長と発達
ビタミンDは骨の成長と発達に重要な役割を果たします。特に子犬や若い犬にとって、適切なビタミンDの摂取は骨の正常な成長を支援します。
3.免疫機能の調節
ビタミンDは免疫機能の調節にも関与しており、感染症や疾患に対する免疫応答を支援します。
4.筋肉の機能
ビタミンDは筋肉の機能にも影響を与えます。適切なビタミンDの摂取は筋肉の健康をサポートし、運動能力を維持します。
犬のビタミンDの必要量は、犬の年齢、体重、品種、活動レベルなどによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約227 IUですが、子犬や妊娠中の犬の場合はより多くのビタミンDが必要とされる場合があります。ビタミンDは日光で合成されるため、適度な日光浴やビタミンDが含まれる食品の摂取が重要です。ただし、ビタミンDの過剰摂取は有害であるため、過剰摂取には注意が必要です。
ビタミンE
ビタミンEは、犬の健康維持に重要な栄養素であり、主に抗酸化作用を持っています。以下に、ビタミンEの主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.抗酸化作用
ビタミンEは細胞を酸化ストレスから保護する抗酸化作用を持っています。これは、細胞や組織を酸化ダメージから守り、老化や慢性疾患のリスクを減少させるのに役立ちます。
2.免疫機能の促進
ビタミンEは免疫機能を正常に保つためにも重要です。適切なビタミンEの摂取は、犬の免疫系の機能を強化し、感染症や疾患に対する抵抗力を高めます。
3.筋肉と神経の健康
ビタミンEは筋肉と神経の健康をサポートします。特に老犬や運動を多くする犬にとって、ビタミンEは筋肉の損傷や神経の変性を予防するのに役立ちます。
4.皮膚と被毛の健康
ビタミンEは皮膚と被毛の健康を維持するのにも重要です。適切なビタミンEの摂取は、皮膚の保湿や再生を促進し、被毛の輝きを保ちます。
犬のビタミンEの必要量は、犬の年齢、体重、品種、活動レベルなどによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約20〜30 IU/ kgですが、この量は個々の犬によって異なる場合があります。バランスの取れた食事を提供することで、通常は十分なビタミンEを摂取できます。ただし、ビタミンEの過剰摂取も問題になり得るため、過剰摂取には注意が必要です。
ビタミンK
ビタミンKは、犬の健康維持に必要な脂溶性ビタミンの一種です。以下に、ビタミンKの主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.血液凝固の促進
ビタミンKは、血液凝固の過程で不可欠な栄養素です。ビタミンKは凝固因子の一つであるプロトンビンを活性化するため、血液凝固の正常なプロセスを支援します。これにより、出血や貧血などの問題を防ぎます。
2.骨の健康維持
ビタミンKは骨形成にも重要な役割を果たします。ビタミンKは骨にカルシウムを固定するために必要であり、骨密度を維持し、骨折や骨関連疾患のリスクを減少させます。
3.血管の健康維持
ビタミンKは、血管の健康を維持するのにも役立ちます。特に動脈硬化や心臓病などの循環系の疾患を予防するのに重要です。
犬のビタミンKの必要量は、犬の年齢、体重、品種、活動レベルなどによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約0.1 mgですが、この量は個々の犬によって異なる場合があります。ビタミンKは通常、食事から摂取されますが、犬の体内で一定量が合成されることもあります。バランスの取れた食事を提供することで、通常は十分なビタミンKを摂取できます。ただし、ビタミンKの過剰摂取も問題になり得るため、過剰摂取には注意が必要です。
ビタミンB1(チアミン)
ビタミンB1、(チアミン)は、犬の健康にとって非常に重要なビタミンの一つです。以下に、ビタミンB1の主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.エネルギー代謝の促進
ビタミンB1は、炭水化物からエネルギーを生成する際の代謝プロセスに不可欠な役割を果たします。犬の体内でブドウ糖がエネルギーに変換される過程で、ビタミンB1はグルコースを代謝する酵素の一部として働きます。
2.神経系の正常な機能
ビタミンB1は神経系の正常な機能にも重要です。特に、脳や神経組織における正常な神経伝達をサポートし、神経系の健康を維持します。
3.食欲刺激
ビタミンB1は食欲を刺激するのにも役立ちます。ビタミンB1の不足は食欲不振や食事摂取量の低下につながる可能性があります。
4.ストレス対応
ビタミンB1はストレスへの対応にも関与します。ストレスや身体の負荷が高まると、ビタミンB1の需要も増加します。
犬のビタミンB1の必要量は、犬の年齢、体重、活動レベルなどによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約0.5 mg/kgですが、この量は個々の犬によって異なる場合があります。バランスの取れた食事を提供することで、通常は十分なビタミンB1を摂取できます。ただし、ビタミンB1の不足は神経障害や消化器系の問題などの健康上の問題を引き起こす可能性があるため、バランスの取れた食事が重要です。
ビタミンB2(リボフラビン)
ビタミンB2(リボフラビン)は、犬の健康にとって重要なビタミンの一つです。以下に、ビタミンB2の主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.エネルギー代謝の促進
ビタミンB2は、炭水化物、脂質、タンパク質などの栄養素をエネルギーに変換する代謝プロセスに不可欠な役割を果たします。特に、細胞内での酸素利用に関与し、ATP(アデノシン三リン酸)の生成を助けます。
2.赤血球の形成
ビタミンB2は赤血球の形成にも関与しています。赤血球は酸素を体内に運ぶ役割を果たすため、ビタミンB2の適切な摂取は酸素供給を正常に維持するのに重要です。
3.視力維持
ビタミンB2は視覚の健康にも関与しています。特に角膜や結膜の健康を維持し、視覚系の正常な機能をサポートします。
4.細胞の保護
ビタミンB2は抗酸化作用を持ち、細胞を酸化ストレスから保護します。これにより、細胞の健康を維持し、老化や慢性疾患のリスクを低減します。
犬のビタミンB2の必要量は、犬の年齢、体重、活動レベルなどによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約0.015 mg/kgですが、この量は個々の犬によって異なる場合があります。バランスの取れた食事を提供することで、通常は十分なビタミンB2を摂取できます。ただし、ビタミンB2の不足は皮膚炎、消化器系の問題、視覚障害などの健康上の問題を引き起こす可能性があるため、適切な摂取が重要です。
ビタミンB3(ナイアシン)
ビタミンB3(ナイアシン)は、犬の健康にとって重要な栄養素です。以下に、ビタミンB3の主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.エネルギー代謝の促進
ビタミンB3は、炭水化物、脂質、タンパク質などの栄養素を体内でエネルギーに変換する代謝プロセスに不可欠な役割を果たします。特に、細胞内での酸化的リン酸化の過程で重要な役割を果たし、ATP(アデノシン三リン酸)の生成を助けます。
2.肌と被毛の健康維持
ビタミンB3は皮膚と被毛の健康をサポートします。適切なビタミンB3の摂取は、皮膚の保湿を促進し、被毛の輝きを保ちます。
3.消化器系の健康維持
ビタミンB3は消化器系の健康を維持するのにも役立ちます。特に消化器管の粘膜の健康を維持し、消化吸収を促進します。
4.神経系の正常な機能維持
ビタミンB3は神経系の正常な機能にも関与しています。特に、神経伝達物質の合成や神経細胞の保護に重要な役割を果たします。
犬のビタミンB3の必要量は、犬の年齢、体重、活動レベルなどによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約12〜20 mg/kgですが、この量は個々の犬によって異なる場合があります。バランスの取れた食事を提供することで、通常は十分なビタミンB3を摂取できます。ただし、ビタミンB3の不足は皮膚炎、消化器系の問題、神経障害などの健康上の問題を引き起こす可能性があるため、適切な摂取が重要です。
ビタミンB5(パントテン酸)
ビタミンB5(パントテン酸)は、犬の健康にとって重要な栄養素です。以下に、ビタミンB5の主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.エネルギー代謝の促進
ビタミンB5は、炭水化物、脂質、タンパク質などの栄養素を体内でエネルギーに変換する代謝プロセスに不可欠な役割を果たします。特に、補酵素A(CoA)の一部として、アセチルCoA(アセチル辞)を形成するのに必要です。アセチルCoAは細胞内でエネルギー生産の中心的な役割を果たします。
2.ストレス緩和
ビタミンB5はストレスへの対応にも役立ちます。ストレスが増加すると、ビタミンB5の需要も増加します。ビタミンB5は副腎皮質ホルモンの合成に関与し、ストレスホルモンのバランスを維持するのに役立ちます。
3.脂肪酸合成
ビタミンB5は脂肪酸合成にも関与します。脂肪酸は細胞膜の構成要素として重要であり、ビタミンB5の適切な摂取は細胞膜の機能を維持するのに役立ちます。
4.ホルモン合成
ビタミンB5はホルモン合成にも必要です。特に副腎皮質ホルモンや性ホルモンの合成に関与し、ホルモンバランスの維持に寄与します。
犬のビタミンB5の必要量は、犬の年齢、体重、活動レベルなどによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約10〜20 mg/kgですが、この量は個々の犬によって異なる場合があります。バランスの取れた食事を提供することで、通常は十分なビタミンB5を摂取できます。ただし、ビタミンB5の不足は皮膚炎、消化器系の問題、エネルギー不足などの健康上の問題を引き起こす可能性があるため、適切な摂取が重要です。
ビタミンB6(ピリドキシン)
ビタミンB6(ピリドキシン)は、犬の健康維持に不可欠な栄養素の一つです。以下に、ビタミンB6の主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.タンパク質代謝の促進
ビタミンB6は、アミノ酸の代謝に重要な役割を果たします。特に、アミノ酸の分解や合成の過程で、ビタミンB6が関与します。これにより、タンパク質の代謝を助け、細胞の成長と修復を支援します。
2.血液の形成
ビタミンB6は、血液中のヘモグロビンの合成にも関与します。ヘモグロビンは赤血球内の酸素運搬に不可欠なタンパク質であり、ビタミンB6の適切な摂取は貧血の予防や治療に役立ちます。
3.神経伝達物質の合成
ビタミンB6は、神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの合成にも関与します。これにより、心理的な健康や行動の調節に影響を与え、ストレスや不安を軽減するのに役立ちます。
4.免疫機能の促進
ビタミンB6は、免疫機能を強化するのにも重要です。特に、リンパ球の活性化や抗体の産生に関与し、感染症や疾患に対する免疫応答をサポートします。
犬のビタミンB6の必要量は、犬の年齢、体重、活動レベルなどによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約1.5〜2.5 mg/kgですが、この量は個々の犬によって異なる場合があります。バランスの取れた食事を提供することで、通常は十分なビタミンB6を摂取できます。ただし、ビタミンB6の過剰摂取は神経障害や消化器系の問題などを引き起こす可能性があるため、適切な摂取が重要です。
ビタミンB7(ビオチン)
ビタミンB7(ビオチン)は、犬の健康維持にとって重要な栄養素です。以下に、ビタミンB7の主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.炭水化物、脂質、タンパク質の代謝促進
ビタミンB7は、炭水化物、脂質、タンパク質の代謝に不可欠な補酵素として働きます。これらの栄養素はエネルギー源として利用されるため、ビタミンB7の適切な摂取は体内のエネルギー生産をサポートします。
2.皮膚と被毛の健康促進
ビタミンB7は皮膚と被毛の健康を維持するのに重要です。ビオチンは皮膚の細胞分裂と成長を促進し、皮膚の健康を維持します。また、被毛の健康的な成長と艶をサポートします。
3.ビオチンは酵素の補酵素として働き、体内での代謝プロセスに必要です。特に、糖新生、脂肪酸合成、アミノ酸代謝などの重要な代謝反応に関与します。
4.神経系の正常な機能維持
ビタミンB7は神経系の正常な機能を維持するのに役立ちます。特に、神経伝達物質の合成に関与し、神経の発達と機能をサポートします。
犬のビタミンB7の必要量は、犬の年齢、体重、活動レベルなどによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約0.04 mg/kgですが、この量は個々の犬によって異なる場合があります。バランスの取れた食事を提供することで、通常は十分なビタミンB7を摂取できます。ただし、ビタミンB7の不足は皮膚炎、被毛の問題、神経系の異常などの健康上の問題を引き起こす可能性があるため、適切な摂取が重要です。
ビタミンB11(葉酸)
ビタミンB11は、一般的に葉酸として知られています。犬の健康にとって重要な栄養素の一つです。以下に、ビタミンB11(葉酸)の主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.DNA合成の促進
ビタミンB11はDNA合成に不可欠な栄養素です。特に、細胞の分裂と成長に必要なDNA合成のプロセスにおいて、ビタミンB11は重要な役割を果たします。これにより、細胞の健康的な成長と再生が促進されます。
2.赤血球の形成
ビタミンB11は赤血球の形成にも関与します。赤血球は酸素を体内に運ぶ役割を果たすため、ビタミンB11の適切な摂取は貧血の予防や治療に役立ちます。
3.胎児の発達
妊娠中の母犬にとって、ビタミンB11は特に重要です。ビタミンB11は胎児の神経管形成に必要であり、神経管奇形などの先天性異常を予防するのに役立ちます。
4.アミノ酸の代謝
ビタミンB11はアミノ酸の代謝にも関与します。アミノ酸はタンパク質の構成要素であり、ビタミンB11の適切な摂取はタンパク質の代謝をサポートし、体内の栄養素バランスを維持します。
犬のビタミンB11(葉酸)の必要量は、犬の年齢、体重、妊娠状態などによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約0.2 mg/kgですが、妊娠中の母犬や成長期の子犬にはより多くのビタミンB11が必要とされます。バランスの取れた食事を提供することで、通常は十分なビタミンB11を摂取できます。ただし、ビタミンB11の不足は神経管奇形や貧血などの健康上の問題を引き起こす可能性があるため、特に妊娠中の母犬には注意が必要です。
ビタミンB12(コバラミン)
ビタミンB12は、犬の健康にとって重要な栄養素であり、コバラミンとも呼ばれます。以下に、ビタミンB12の主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.赤血球の形成
ビタミンB12は、赤血球の形成に不可欠な栄養素です。赤血球は酸素を体内に運ぶ役割を果たすため、ビタミンB12の適切な摂取は貧血の予防や治療に重要です。
2.神経系の正常な機能
ビタミンB12は神経系の正常な機能にも重要な役割を果たします。特に、神経伝達物質の合成や神経細胞の健康維持に関与し、神経系の発達と機能をサポートします。
3.DNA合成の促進
ビタミンB12はDNA合成にも関与します。細胞の分裂と成長に必要なDNA合成のプロセスにおいて、ビタミンB12は重要な役割を果たします。
4.アミノ酸の代謝
ビタミンB12はアミノ酸の代謝にも必要です。アミノ酸はタンパク質の構成要素であり、ビタミンB12の適切な摂取はタンパク質の代謝をサポートし、体内の栄養素バランスを維持します。
犬のビタミンB12の必要量は、犬の年齢、体重、活動レベルなどによって異なります。一般的に、成犬の一日の必要量は約0.06〜0.1 μg/kgですが、この量は個々の犬によって異なる場合があります。バランスの取れた食事を提供することで、通常は十分なビタミンB12を摂取できます。ただし、ビタミンB12の不足は貧血や神経障害などの健康上の問題を引き起こす可能性があるため、適切な摂取が重要です。
ビタミンC
犬はビタミンCを自己合成することができるため、通常は外部からの補給は必要ありません。しかし、特定の状況下では追加のビタミンCが必要とされることがあります。以下に、ビタミンCの主な働きと必要量について詳細に説明します。
1.抗酸化作用
ビタミンCは強力な抗酸化物質であり、体内の細胞や組織を酸化ストレスから守る役割を果たします。酸化ストレスは細胞の老化や疾患の原因となるため、ビタミンCの摂取は健康を維持するのに重要です。
2.コラーゲンの合成
ビタミンCはコラーゲンの合成に必要な栄養素です。コラーゲンは皮膚、関節、筋肉などの組織に存在し、健康な組織を維持するのに重要です。ビタミンCの不足はコラーゲンの合成を妨げ、皮膚の健康や傷の治癒能力に影響を与える可能性があります。
3.免疫機能の促進
ビタミンCは免疫機能をサポートする役割もあります。特にストレスや病気の時には、ビタミンCの需要が増加し、免疫システムの正常な機能を維持するのに役立ちます。
犬のビタミンCの必要量は、一般的には体重や健康状態に応じて変化します。通常、健康な犬は自己合成によって必要な量を補給できるため、追加のビタミンCサプリメントは必要ありません。ただし、高齢犬やストレス疾患を受けている犬やビタミンCの補給必要とする特定疾患がある場合は、獣医師の指示に従ってビタミンCサプリメントを投与しなければいけない場合があります。
まとめ
ビタミンは、愛犬にとっても欠かせない栄養素の1つです。市販のドッグフードでも摂取することができますが、いつもの手作りごはんにトッピングしたり、おやつをあげたりする際は、食材の性質を十分に理解しておくことが大切になってきます。ビタミンもしっかりと摂取できるように心がけて、愛犬が健康で長生きできるようにしてあげてください。
なお、まとめとして下記にリストを添付いたしましたので、こちらもご参考にしてください。
ビタミン | 役割 | 必要量 | 過剰症 | 欠乏症 | おすすめの食材 |
ビタミンA | 視力、皮膚や粘膜の健康維持、免疫機能の強化 | 1650~82500μg | 骨格異常、皮膚炎、脱毛、肝脾腫、歩行障害など | 易感染症、発育不全、夜盲症など | レバー、うなぎ、人参、ほうれん草、かぼちゃ、春菊 |
ビタミンD | カルシウムの吸収促進、骨の形成 | 12.5~75μg | 食欲不振、嘔吐、骨格異常、腎臓障害など | くる病、軟骨症、骨折、けいれん、脱毛など | 魚介類、きのこ類、卵黄、牛乳 |
ビタミンE | 抗酸化作用、細胞膜の保護 | 33.5mg以上 | 倦怠感、下痢、腹痛、筋肉痛、肝臓障害など | 溶血性貧血、生殖障害、免疫機能低下など | ナッツ類、種子類、植物油 |
ビタミンK | 血液凝固 | 0.03mg以上 | 溶血性貧血、黄疸、肝臓障害など | 鼻血、歯肉出血、皮下出血、血便、貧血など | 緑黄色野菜、納豆、チーズ |
ビタミンB1 (チアミン) | エネルギー代謝に関与、神経機能の維持 | 2.25mg以上 | なし | 疲労、食欲不振、免疫機能低下など | 豚肉、玄米、枝豆、納豆 |
ビタミンB2 (リボフラビン) | エネルギー代謝に関与、皮膚や粘膜の健康維持 | 5.2mg以上 | なし | 疲労、食欲不振、免疫機能低下など | レバー、うなぎ、ブリ、納豆、牛乳 |
ビタミンB3 (ナイアシン) | エネルギー代謝に関与、皮膚や粘膜の健康維持 | 13.6mg以上 | なし | 皮膚炎、口内炎、下痢、脱毛など | レバー、豚肉、鶏肉、きのこ類 |
ビタミンB5 (パントテン酸) | エネルギー代謝に関与、ホルモンの合成 | 12mg以上 | なし | レバー、納豆、アボカド、きのこ類 | |
ビタミンB6 (ピリドキシン) | アミノ酸代謝に関与、神経機能の維持 | 1.5mg以上 | なし | バナナ、鶏肉、豚肉、魚介類 | |
ビタミンB7 (ビオチン) | アミノ酸代謝に関与、神経機能の維持 | なし | バナナ、鶏肉、豚肉、魚介類 | ||
ビタミンB11 (葉酸) | アミノ酸代謝に関与、神経機能の維持 | 0.216mg以上 | なし | バナナ、鶏肉、豚肉、魚介類 | |
ビタミンB12 (コバラミン) | 赤血球の形成、神経機能の維持 | 0.028mg以上 | なし | レバー、うなぎ、シジミ、チーズ | |
ビタミンC | 抗酸化作用、免疫機能の強化、コラーゲンの生成 | 下痢、嘔吐 | キウイ、レモン、イチゴ、ブロッコリー、パプリカ |
の成犬維持期を参照、ビタミンA、D、Eは日本食品標準成分表の値に変換
※参照:「イヌの維持期のAAFCO養分基準(2016)を満たす手作り食レシピの設計法」(ペット栄養学会誌)