犬にとっての理想的な食事とは、人間にも共通していることなのですが、栄養バランスと健康を維持するために必要な栄養素が含まれていることが大切になります。以前、お話いたしましたとおり、犬は人間と違い肉食系に近い雑食動物であり、タンパク質を豊富に含む食事が最も重要になってきます。
そこで、一般的に犬にとって理想的な食材を栄養素別に紹介したいと思います。ただし、犬の食事には個々の犬の健康状態や年齢、運動量などの状態に基づいて調整する必要があります。詳しくは、獣医師や犬の管理栄養士などの専門家に相談することをお勧めします。
犬にとって基本的な食材
1.タンパク質
肉類:鶏肉、牛肉、豚肉、ラム肉、馬肉など
魚類:鮭、サバ、イワシ、アジなど
卵:鶏卵、ウズラ卵など
乳製品:ヨーグルト、チーズなど
2.炭水化物
穀物:米、小麦、オートミールなど
野菜:さつまいも、じゃがいも、かぼちゃなど
果物:リンゴ、バナナ、ブルーベリーなど
3.脂質
鶏皮、魚油、亜麻仁油など
4.ビタミン・ミネラル
野菜、果物、海藻類など
ここれらの栄養素は、犬の健康を維持するために必要な要素です。栄養バランスを考慮しながら、適切な食材を選んで手作りドッグフードを提供することが重要です。
食材の選び方のポイント
手作りドッグフードの食材を選ぶ際には、いくつかのポイントに注意することが大切です。以下、食材を選ぶ際のポイントをいくつかご紹介いたします。
1.新鮮な食材
食材の品質と新鮮さは最優先です。新鮮で高品質な食材を選び、添加物や防腐剤が少ないものを選ぶようにしましょう。特に肉や魚を選ぶ場合は、新鮮で安全なものを選びましょう。
2.栄養価を考えた食材
食材が犬に必要な栄養素を提供できるかどうかを考慮しましょう。タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなど、バランスの取れた栄養素を含む食材を選びます。
3.消化しやすい食材
消化器官に優しい食材を選ぶようにしましょう。消化しやすい食材を選ぶことで、消化器系のトラブルを最小限に抑えることができます。
4.アレルギーなどのリスク対応
犬が特定の食材に対してアレルギーなどのを示す可能性がある場合は、その食材を避けるようにします。一般的なアレルギーの原因となる小麦や大豆、乳製品などの食材に注意が必要です。
5.個体差に気を付ける
各々の犬には個体差がありますので、特定の食材が個々の犬に合うかどうかを考慮して作りましょう。食材を選ぶ際には、徐々に与えて様子を見ることをお勧めします。
6.獣医師や栄養士のアドバイス
ペットの食事プランを決定する際には、獣医師や栄養士に相談することが重要です。特に犬が特定の健康問題を抱えている場合は、専門家のアドバイスを得ることが必要です。
これらのポイントを考慮して、手作りドッグフードの食材を選ぶことが大切です。手作りドッグフードを与えることは、愛犬にとってメリットも多いですが、デメリットもたくさんあります。これらのポイントを守り、愛犬の健康状態をよく観察しながら、手作りドッグフードを作ってあげてください。
基本的な手作りのドッグフードの作り方
手作りの基本的なドッグフードを作るには、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。以下は、我が家でも毎日のように作っている基本的な手作りドッグフードになります。
事前の基礎知識
1.摂取量はどのくらい?
基本的な1日の摂取量は、体重の2〜3%を目安にしてください。我が家の場合、8㎏なので、160g~240gになります。なお、あくまでも基本摂取量になりますので、年齢や肥満度、運動量なども考慮して量の調整をしてください。
食材の割合は、タンパク質:野菜:炭水化物=1:1:0.5〜1 で準備してください。肥満などの場合は、炭水化物の量を減らすなどして調整をしてください。
2.タンパク質
タンパク質の1日あたりの摂取量は、体重1kgあたり成犬で約6,5g、子犬で約9gになります。我が家では鶏ササミを良く使いますが、100gあたりタンパク質量が約28gなので、8kgの場合、最低でも1日に185gの鶏ササミが必要になります。
これは最低摂取量なので、許容量である最低摂取量の3倍の555gまでの範囲で調整してください。タンパク質は、犬の健康を保つための必須栄養素になります、摂取量が足りているかどうか食事の都度に確認してください。
反面でタンパク質の過剰摂取は、肥満や肝機能障害、腎臓障害を引き起こす原因となります。適正量を計算して不足や過多にならないよう注意も必要です。
※ お勧めのタンパク質(100gあたりのタンパク質含有量)
鶏むね肉 | 100gあたり約23g |
牛肉(赤身) | 100gあたり約22g |
豚肉(赤身) | 100gあたり約23g |
白身魚(サーモン・タラなど) | 100gあたり約18g |
青魚(サバ・サンマ・アジなど) | 100gあたり約19g |
肉類は、タンパク質が豊富ですが脂質も多いため、皮や脂身はしっかり取り除き、赤身をあげるようにしてください。
魚類は、必ず火を通し、骨を取り、身をほぐしてください。特に白身魚は、タンパク質に加えてカルシウムや鉄分・DHAも多く含まれているため、おすすめのタンパク源になります。
3.野菜
タンパク質から摂取しにくいビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素は、野菜から摂取します。しかし、人間と違って犬は食物繊維の消化が苦手です。調理の際、みじん切りをして消化器官にできるだけ負担にならないよう工夫してあげてください。
※ お勧めの野菜
・キャベツ
・ニンジン
・かぼちゃ
・レンコン
・トマト
・じゃがいも
・きゅうり
・アスパラガス
・パプリカ
愛犬の好き嫌いによって偏ることなく、バランスよく与えるようにしてください。
4.炭水化物
炭水化物は基本的に白米をあげるようにしてください。玄米や雑穀米は、消化が良くないため胃に負担がかかります。うどんは消化に良いため麺類の中ではお勧めいたします。ただし、うどんには塩分が含まれているため、与えすぎに注意が必要です。
どの食材も、普段から冷蔵庫にある食材ではないでしょうか。人間がよく食べる食材で犬のご飯も作れます。
危険な食材と注意が必要な食材
【絶対に与えてはいけないもの】
1.チョコレート、ココア
テオブロミンという成分が含まれており、犬にとって非常に毒性が高いです。少量でも下痢、嘔吐、発作、最悪の場合は死に至ることがあります。
2.ブドウ、レーズン
原因は完全には解明されていませんが、腎不全を引き起こす可能性があります。数粒でも中毒を起こす犬もいるので、絶対に与えてはいけません。
3.アボカド
ペルシンという成分が含まれており、心筋炎や肺水腫を引き起こす可能性があります。
4.キシリトール
人工甘味料の一種で、血糖値を急激に下げ、肝臓障害を引き起こす可能性があります。
5.ネギ類(長ネギ、玉ねぎ、ニラなど)
アリシンという成分が含まれており、赤血球を破壊し、貧血を引き起こす可能性があります。
6.ニンニク、らっきょう
ネギ類と同じくアリシンが含まれており、貧血を引き起こす可能性があります。
7.アルコール
嘔吐、下痢、脱水症状、昏睡、最悪の場合は死に至ることがあります。
8.生のレバー
ビタミンA過剰症を引き起こす可能性があります。
9.鶏の骨
喉に刺さったり、消化管を傷つけたりする可能性があります。
10.マカダミアナッツ
嘔吐、下痢、発熱、ふるえ、脱力などの症状を引き起こす可能性があります。
【与えてはいけないもの】
1.乳製品
下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こす犬がいます。
2.脂肪分の多い肉
下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こす可能性があります。
3.刺激物
唐辛子、わさび、マスタードなどの刺激物は、胃腸を刺激し、下痢や嘔吐を引き起こす可能性があります。
4.カフェイン
チョコレートやココア以外にも、コーヒー、紅茶、緑茶などにも含まれています。興奮、不安、嘔吐、下痢などの症状を引き起こす可能性があります。
5.ブドウ糖
血糖値を急激に上げ、下痢や嘔吐を引き起こす可能性があります。
【注意が必要な食材】
1.レバー(牛・豚・鶏)
適量を守り、十分に加熱しましょう。
2.甲殻類
消化が悪く、下痢の原因となることがあります。
3.ほうれん草
ほうれん草に含まれる「シュウ酸」は膀胱炎の原因になります。尿路疾患など、尿路系に疾患がある場合は避けましょう。
4.煮干し・海苔
過剰摂取は消化不良や塩分過多のリスクがあります。無添加・低塩分のものを選び、香りづけ程度にしておきましょう。
【塩分量チェックも忘れずに!】
犬は自然の旨みや甘さは感じられるものの、味覚は人間の1/5程度なので、犬のご飯に味を付ける必要ありません。また、犬は汗をかかないため、味付けをすると容易に塩分過多になってしまいます。
上記以外にも、犬にとって危険な食材はたくさんあります。愛犬に何かを与える前に、獣医師に相談することをお勧めいたします。
手作りドッグフード基本レシピ
【材料】
・ 鶏ササミ肉 500g(ササミ肉4本)
・ 人参 中くらいのものを1本
・ キャベツ 葉5枚程度
・ かぼちゃ 1/8玉
・ えのき茸 1/2株
・ パプリカ 1個
・ 白米(ごはん)150g×2
・ 出汁かつお 一握り
※ 我が家の8kgの愛犬の2食分の食事をベースにしたものになります。
【手順】
1.400ccの水を沸騰させ、鶏ササミを5分間ほど茹でます。
2.野菜はすべてみじん切りにします。
3.鍋から鶏ササミを取り出し鍋に出汁かつおを入れ1度沸騰させます。
4.出汁かつおを取り出しみじん切りした野菜を鍋に入れ5分ほど中火で煮ます。
5.鍋の粗熱を取り、先ほど取り出した鶏ササミと一緒に食事の時間まで冷蔵庫に保存します。
6.フードボールにごはん150gと鍋の野菜を半分入れ、鶏ササミを2本細かくほぐして上に乗せて出来上がりです。
このレシピは、我が家で作っている手作りドッグフードになります。大きさや年齢に応じて調整することをお勧めいたします。また、獣医師の指示に従って栄養補助食品を追加することもお勧めします。
手作りドッグフードを作るときの注意点
手作りドッグフードを作る際には、いくつかの重要な注意点があります。
1.栄養バランス
犬が必要とする栄養素を十分に含むように、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどのバランスを考えたレシピを作成します。栄養不足や過剰摂取を避けるために、獣医師や栄養士と相談することが重要です。
1.食材の品質
食材の品質が重要です。新鮮で高品質な食材を選び、適切に調理して安全性を確保します。有機野菜や無添加の肉を選ぶことが望ましいです。
3.衛生管理
食材の調理や保存、食器の清潔さなど、衛生管理に十分な注意を払います。犬の健康と安全を確保するために、食材や調理器具を適切に取り扱います。
4.食材の適切な調理
食材は適切な方法で調理を行うことが重要です。例えば、肉は適切に骨や皮を取り除くなどの方法で調理し、食べやすく安全なものを与えるようにしてください。
5.食事の量と回数
犬の体重や活動レベルに合わせて、適切な量を計算し、適切な回数(1日2~3回)与えます。過剰摂取や栄養不足を防ぐために、適切な方法で食事量を管理してください。
6.個々の犬に合わせる
個々の体形や健康状態に応じて、食事内容を調整してください。年齢、体重、活動レベル、健康状態などを考慮して、適切な栄養バランスを守ることが大切です。
手作りドッグフードは栄養バランスや衛生管理など、いくつかの注意点を考慮する必要がありますが、犬の健康や幸福に貢献する素晴らしい方法でもあります。
手作りのドッグフードは、飼い主さんが愛犬に食べさせているものを完全に把握できるというメリットがあります。また、添加物や愛犬の食物アレルギーが気になる場合は、それらを取り除くことができるといったメリットもあります。しかし、手作りのドッグフードだけで愛犬に必要な1日の栄養素をまかなおうとすると、かなりの知識と労力が必要になり、また、金銭的にも高くつくことがあります。基本的に成犬の場合、手作りフードを食事の3割程度にして、残りの7割を市販のドッグフードでまかなうことが推奨されています。
手作りドッグフードを作る際は、愛犬の健康を第一に考え、バランスの取れた食事を作ってあげてください。